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“ファンづくりのきっかけ”に ふるさと納税は大きな一歩

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商店街名 網走中央商店街振興組合/北海道網走市

地域の魅力を発信するコミュニケーションツールとしても注目される「ふるさと納税」の返礼品。商店街の専門店のおすすめ商品を返礼品にまちのファンをつくりたい――。まちづくり会社がリーダーとなって取り組む網走中央商店街の事例を紹介。

左から網走市観光商工部商工労働課に所属し、ふるさと納税を担当する篠原宏寿さん、
商店街振興組合の理事長とまちなか網走の代表を兼務する田中雄一さん、
網走市地域おこし協力隊としてまちなか網走に派遣されている浦雅人さん、
まちなか網走の事務・廣木紀美子さん

返礼品を通じて網走の魅力を全国へ

 網走中央商店街は、網走市内で唯一の商店街。長さ約600mにも及ぶ長いアーケードに沿って、肉屋や魚屋、ケーキ屋など、多彩な専門店が軒を連ねる。「専門店がある=その道のプロがいる」というのは、商店街の大きな強み。同商店街では、その強みをふるさと納税にも活かしている。ふるさと納税ポータルサイトで網走市のページを開くと、「商店街の精肉店が目利きした網走ポーク」や、「商店街の菓子店の手づくりラスク」などの品々が返礼品として並んでいる。

 商店街のふるさと納税を取り仕切るのは、’18年に設立された「株式会社まちなか網走」。同社の代表・田中雄一さんは、網走中央商店街振興組合の理事長でもあり、商店街の老舗「フジヤ書店」の4代目。生まれ育った商店街への思い入れは人一倍強い。「僕の最終目標は、商店街を含むまち全体のにぎわいを創出すること。そのミッションに向けて、よりスピーディかつ主体的に動けるように、まちづくり会社を立ち上げたんです」

 まちづくり会社の設立は、商店街のふるさと納税参入を加速させるきっかけにもなった。店主の高齢化が進む同商店街では、「ふるさと納税をやってみたいけどパソコンが苦手」「日々の仕事が忙しくて手が回らない」という声が多かったため、まちづくり会社が受注や発送を代行することにしたのだ。以来、店側は商品を用意するだけですむようになり、負担が大幅に軽減。「それならやってみようか」と興味をもつ店が増え、ふるさと納税スタート当初は1店舗のみだったが、現在は4店舗が参加するようになった。

 田中さんがふるさと納税に力を入れる理由は、〝網走ファン〞を増やしたいからだという。「ふるさと納税は、網走ファンを増やすきっかけになると思うんです。まずは返礼品を通じて網走に興味をもってもらい、そこから『実際に行ってみようか』『もう一度行こうか』『気に入ったから移住しようか』という人が増えていったらいいなと思っています。こうして観光客や移住者が増えれば、商店街を含むまちの活性化につながりますから」

自慢の返礼品で商店街の魅力をアピールします!

VOICE_1 「北海道オホーツクラスク」詰合せセット

網走スウィーツスポンジ屋 店主高崎裕康さん

鮭とば、オホーツクの塩など、地元食材を使ったラスクがうちの名物。
ふるさと納税を通じてたくさんの人に味わってもらいたいですね。
「返礼品のラスクがおいしかった」と直接お電話をもらったこともあり、励みになってます。

VOICE_2 四元豚「網走ポーク」ロース 1.2kg

肉のまるゆう 店主清水秀男さん

返礼品は、吟味して納得できた肉だけを仕入れた網走ポークやジンギスカン。
リピーターの方も多いです。昨年テレビ番組で網走ポークが取り上げられた際には、
1カ月の上限を超える申し込みが殺到して驚きました。

VOICE_3 「千秋庵のお菓子」詰合せ30 個セット

千秋庵 店主藤田恵美子さん

網走にちなんだお菓子をメインに作っています。
ふるさと納税には興味があり、市の事業者説明会にも参加したのですが、
自分でやるにはハードルが高くて。田中さんにお声がけいただいて出品することができました。

チームワークがカギとなる商店街の「ふるさと納税」
上)いつでも相談し合える関係の田中さんと篠原さん。下)まちづくり会社では朝市開催やフリーペーパー発行も行い、商店街の活性化に貢献

 商店街のふるさと納税は、まちづくり会社「株式会社まちなか網走」が代表事業者となり、現在、約10のポータルサイトに返礼品を出品。 
 受注はまちづくり会社が一括管理し、注文を受けるとお店に連絡し商品を用意してもらう。それを集荷し、まちづくり会社から発送するという仕組みだ。受注は事務の廣木さん、集荷は網走市から派遣されている地域おこし協力隊の浦さんが主に担当し、受注から発送までスムーズに行うことができている。
「まちづくり会社は、受注や発送の手間賃をお店から得て収益化しています」と田中さん。一方、お店は手間が減るというメリットがあり、Win -Winの関係が成立しているという。

 ふるさと納税に取り組むにあたって、田中さんは行政との連携も大切にしている。網走市観光商工部商工労働課の篠原宏寿さんは、よき相談相手のひとりだ。篠原さんに、網走市全体のふるさと納税の現状を聞いた。「網走市のふるさと納税は今年7年目。申込み数は’21年には9万件を突破し、寄付総額も同年12月時点で21億円を超え、当初の目標・20億円を達成しました」

 ’21年の躍進は、コロナ禍で巣ごもり需要が増えたことに加え、市や商工会議所が事業者に呼びかけて返礼品のバリエーションを増やしたことが奏功した様子。返礼品を定期的に届ける「定期便」も好調だったことから、篠原さんは「商店街でも定期便を始めてみては?」とアドバイス。さっそく’22年2月から、1度の申し込みで商店街の4店舗の味が楽しめる「まちなか網走おすすめ便」がスタートした。

 さらに篠原さんは、返礼品の出品をきっかけにデザインやパッケージの重要性に気づき改良を希望する事業者に、製品パッケージの改良に使える市の補助制度をすぐに紹介。申請時はまちづくり会社もサポートし、現在、リニューアルが進行中だという。
 行政・個店と手を取り合ってまちづくり会社が進める商店街のふるさと納税。今後のさらなる盛り上がりに期待したい。

★この記事は、商店街活性化の情報誌「EGAO」の2022 Spring(春号)に掲載されています。
「EGAO」をご覧になりたい方はこちらへ。

商店街活性化の情報誌「EGAO」

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