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商店街が示すSDGs 達成への道

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商店街名 魚町商店街振興組合/福岡県北九州市

JR小倉駅から徒歩3分、北九州市の中心的商店街である魚町商店街振興組合(通称、魚町銀天街)は、古くから先進的な取組みを重ね、’18年、日本初の「SDGs商店街宣言」を掲げた。SDGsによって自身の価値と存在感を高めていく商店街。そのあゆみを紐解く。

商店街を人の拠り所となる地域コミュニティに
魚町商店街振興組合理事長の梯輝元さん。「魚町に生まれ育ち商売をさせていただいているからには、街にできる限りの恩返しがしたい」

 北九州市には、市民が団結し公害や暴力団といった地域特有の社会問題に対峙してきた〝市民力の基盤〞があるという。魚町銀天街が昭和26年に全国初のアーケード商店街となった際も、前例がなく役所の許可がおりなかったため、店主たちが当時の建設省に直談判して許可を勝ち取ったという歴史がある。

 そんな地で2000年代初頭に深刻な社会問題となったのがホームレスの増加だ。夜間に雨風を凌ぐためホームレスがアーケード下の店前で寝ることが増え、商店街としても対応を迫られたのだ。魚町商店街振興組合理事長の梯輝元さんは、当時、夜な夜な商店街を歩き、寝ている人に声をかけて話を聞き、債務整理の手伝いやホームレス自立支援センターへのつなぎ役をするなど地道に活動を続けたという。

「彼らは単に住む家がないのではなく、安心できる居場所や社会とのつながりを失っていたのです。この時、商店街を人々の拠り所となる場所にしなければならないと強く感じました」と、梯さんは振り返る。

 同商店街が実施する社会的な弱者に寄り添う取組みは他にもある。20年以上前から尽力してきた、 障がい者の自立支援だ。チャリティー餅つき会を開催したり、介助者を募集するチラシ配りに協力したり、バリアフリーの勉強会を実施したりするなど、当事者たちと手を結んで活動を行っている。

障がい者自立生活支援 ( 2000年頃

障がいのある当事者とともに歩み続ける
魚町商店街振興組合は20年以上前から障がい者の自立支援活動を積極的に行ってきた。
最近ではユニバーサルマナー検定受験会場設置、車いす体験イベント開催のほか、
改正障害者差別解消法(2021年6月公布)の啓発活動などを障がい者支援団体とともに行っている。
NPO法人「自立生活センターぶるーむ」代表の田中雄平さんは、
「商店街でお店を持つのもいいかも」と笑顔で話す 。

ホームレス自立支援 ( 2000年頃 )

一人ひとり声かけして回る地道な活動
リーマンショックや生活保護受給者削減などの社会状況を背景に、
ホームレスとなる人が増えた2000年代。
アーケード内に野宿する人たちを見てどうにかしなければと、
「ホームレス自立支援センター北九州」の協力を得て、地道な支援活動に取り組んだ。

先進的な取組みで商店街に若者を呼び込む

 2010年以降、魚町商店街振興組合はさまざまな先進的な取組みを加速させた。そのスタートを象徴するのが通称「魚町エコルーフ」だ。魚町1丁目と2丁目を分ける国道199号線に架かる、透過性の太陽光パネルを載せたこの屋根は、5kw/hを発電。アーケードの電力の一部として活用されている。LED照明や光触媒塗装により、環境への配慮も万全だ。ちなみに現在アーケードで消費される電力は、すべてが自然エネルギー由来のもの。電気料金の1%は途上国支援団体に寄付されるという電力サービスを利用している。

 翌2011年には通行量の減少や空き店舗の増加といった問題を解消しようと、新たな人の流れを生み出す取組みにも着手。遊休不動産を活用しエリア再生のビジネスプランを創出する実践型スクール「リノベーションスクール」を全国に先駆けて開催した。受講生はリノベーションのビジネスプランを練り上げて不動産オーナーにプレゼンし、事業の実現化に向けてブラッシュアップしていく。当時はリノベーションそのものが目新しかったが、梯さんはそこにもうひと工夫を加える案を発した。「リノベーションで建物のワンフロアを小分けにし、1〜2坪くらいのスペースをたくさんつくってもらいました。そうすることで一物件の賃料を下げることができ、創業間もない事業主や団体、若い人たちにも借りてもらいやすくしたのです」

 かくして狙いは当たり、多くの若手創業者たちが、商店街に店を構えることに。それにより、学生や親子連れなど、それまでには見られなかった若い人々が行き交うようになった。
 大学生を中心とする地域実践活動拠点「北九州まなびとESDステーション」、子育て支援施設「ママトモ魚町」、規格外野菜の販売で廃棄野菜削減に貢献する「アルク農業サービス」など、地域社会の課題解決に向けて活動しているさまざまな団体も、この時期に商店街に仲間入りした。

エコルーフ建設(2010年)

全国的にも新しい脱炭素への取組み
2010年、魚町1丁目と2丁目の間に建設された「エコルーフ」。
国道上に架かるアーケードとしては全国で2例目となる。透過性太陽光パネルを設置して5kw/hを発電、
アーケードの電力として活用している。照明はLEDおよびエバーライトを使用。
光触媒を塗装することにより、二酸化窒素を除去している。全長約21m、幅約16m、高さ約8m。
雨天時も濡れずに通行できるようになり、来訪者の利便性も高まった。

全国初リノベーションスクール開校(2011年)

リノベーションスクールとは
株式会社リノベリングが主催する、遊休不動産を活用してエリア再生のためのビジネスプランを創り出す短期集中の実践型スクール。
魚町エリアは好立地のため賃料が高めだが、リノベーションにより安く入居できる小さな物件を増やしたことで、
資金力のない若手事業者たちでも開業できるようになった。

北九州まなびとESDステーション
北九州市内の全10大学の連携で生まれた、地域実践活動拠点。
学生をはじめ、地域の人々や企業などが協働でさまざまなプロジェクト活動に取り組む。
一般公開の講座やイベントなども開催される。
リノベーションされたビルの地下に学びたい人が自由に集える場所がある。

【ママトモ魚町】
商店街が親子連れでにぎわうことを願い、2012年にオープン。
子育て支援活動を行うNPOが自主運営する。
親子が遊べるフリースペースを備え、子どもの一時預かりにも応じる。
買い物中の授乳やおむつ替えにも利用可能。
リノベ物件「ポポラート3番街」の2階で商店街に来る親子を明るく迎え入れる。

アルク農業サービス
農作業代行、農機具レンタル、農業技術相談などの業務を手がける会社が、
規格外の野菜を販売するショップを構えた。
安くて新鮮な野菜を求めて商店街に人が集まるようになり、
廃棄野菜の減少とにぎわい創出に貢献している。
農家の収入向上にも一役買っている。

グリーンバード小倉チーム誕生 (2013年)

ESDステーションから生まれた学生の“お掃除プロジェクト”
グリーンバードとは「きれいな街は、人の心もきれいにする」をコンセプトに、
原宿・表参道で生まれたプロジェクト。
それが、「北九州まなびとESDステーション」での学びををきっかけに小倉にも誕生した。
現在は小倉・北方・黒崎・折尾の4拠点に活動が広がり、北九州の街をきれいにしている。
大学生が中心となって運営し、清掃活動を精力的に継続している。

商店街と個店の取組みをSDGsが後押し

 北九州市は2018年、経済協力開発機構(OECD)によってアジア初の「SDGs推進に向けた世界のモデル都市」に認定された。魚町商店街振興組合はこれをきっかけに日本初の「SDGs商店街」となることを宣言。それまで行ってきた取組みを棚卸ししてSDGsの17項目に照らし合わせてみたところ、ほとんどすべての項目に当てはまることがわかった。先進性と行動力を活かして商店街の魅力を向上させ、人を呼び込む努力をしてきたこの商店街。それがSDGsという名のもとに時代の流れと合致したのだ。

 商店街の各店舗も、普段の営業の中でSDGs的な取組みを実践している。たとえばカフェ「Parts of Life」では、2018年から使い捨てないガラスやステンレスストローを取り入れてきたし、呉服店「ゑり福」で取り扱う大判の風呂敷は、大小さまざまな荷物に対応するエコバッグとして活用でき、レジ袋の削減に貢献する。輸入食品店「D.G.shop」では、賞味期限が接近したものや端数となり大手に卸せなくなったものを積極的に買い取って、割引販売。「辻利茶舗」では、栄養豊富ながら廃棄されてきた茶の出がらしを活用するため、醤油メーカーとタイアップして出がらしをおいしく食べるためのポン酢を開発した。さらに店主の辻利之さんは、市内の放置竹林の問題を解決しようと、竹を活用するイベント「小倉城竹あかり」も手がけている。 
 いずれの店舗も、こうした取組みを〝SDGsだから〞ではなく、自分たちと社会に良いことを考えた結果、当たり前のように行ってきたことが共通している。

個店の取組み

Parts of Life
こだわりのコーヒーなどを提供しているこちらのカフェでは、
2018年からステンレス製およびガラス製のストローを導入している。
専用のブラシで洗って何度も使えるため、コストを抑えながらプラスチックごみも削減できる。口当たりがひんやりとしており、冷たいドリンクをおいしく飲めるという利点もある。

ゑり福
創業99年を迎えた呉服店。店頭に豊富に並んでいる風呂敷は、
さまざまな大きさや形の荷物に柔軟に対応できる便利な“ エコバッグ”。
持ち運びがしやすく、レジ袋を使用しないことでCO2の削減に貢献できる。
「“もったいない”の精神に世界が追い付いてきましたね」と社長の瀬口裕章さん。

辻利茶舗
1860年(萬延元年)に創業し、市内に3店舗と海外に複数店舗を構えるお茶の専門店。地元醤油店とともに、栄養豊富な“お茶がら”を捨てずに食べるポン酢を開発した。
店主の辻利之さんは、放置竹林の竹で作った灯籠で小倉城を彩るイベント「小倉城竹あかり」に3年前から取り組む。「今後は竹を加工した商品の開発なども予定しています」と辻さん。

D.G.shop
世界中からオーガニックやフェアトレードの食品を集めたショップ。
4年ほど前から、消費期限接近品や大手に卸せない端数の商品を積極的に仕入れ、
値引きして販売するという取組みを行っている。
消費期限の近い値引き商品を目立つ位置に陳列し、お客様に買い物を楽しんでもらいながら食品ロスを抑える。

大きな目標に向かって一歩ずつあゆんでいく
商店街に掲げられた、受賞をアピールするフラッグ
東京農業大学生によるベンチャー企業が企画した、昆虫食の自動販売機も設置されている

 こうした取組みが実を結び、同商店街は2019年、外務省が主催する「ジャパンSDGsアワード」において最高賞の内閣総理大臣賞を受けた。商店街という市民に近い立ち位置でSDGsに取り組む姿勢や積み重ねてきた実践力、SDGs17のほぼ全ての目標に対して包括的に取り組んできた実績などが評価されたという。受賞以降、商店街には視察や修学旅行生の見学要請も増えた。自ら高校生に話をすることもある梯さんは、
「高校生たちが商店街にかかわる人や物事を幅広く知ることで、社会に向けての視野を広げてもらえたら」と話す。商店街のこの包容力は、未来ある若者が社会の多様性や課題解決のヒントを学ぶための貴重な教材ともなるのだ。

 最近は、さまざまな企業と手を結んだ取組みも特徴的。たとえば商店街の理事たちの名刺は、エプソンとのコラボレーションにより乾式古紙再生システムを活用した再生紙でつくられたもので、印刷は、市内の障がい者自立支援施設で行っている。「この商店街に集う人は新しいモノへの感度が高いと認識いただいているようで、新商品のサンプリングに来られる企業も多いんですよ」

梯さんは、続ける。
「これからの商店街は、売り買いの場だけではないさまざまな付加価値を設け、社会貢献をめざすことで存在意義を見出していく必要があります。いわゆる打ち上げ花火的なかたちではなく、小さな取組みでも社会に必要とされることを地道に積み重ねていくことが大切です」

 SDGs達成という大きな目標に向かって、これからも魚町商店街振興組合は着実にあゆみを進めていく。

★この記事は、商店街活性化の情報誌「EGAO」の2022 Spring(春号)に掲載されています。
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