商店街名 | 中町商店街振興組合/長野県松本市 |
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松本城の城下町にある中町商店街は、毎月一度の歩行者天国を活用して、’21年夏から継続的なエコイベントを実施。さまざまなワークショップや体験会を通じて、来場者に環境問題やエコに触れる機会を提供した。
太陽熱でお湯を沸かしたり、料理ができる「ソーラークッカー」について解説&実演中
〝蔵の街〞として知られる松本市中心部の中町商店街。’21年夏、商店街はこれまで年数回だった歩行者天国を、毎月第4日曜日に実施することにした。〝車の利用を減らし、環境と健康にやさしい持続可能なまちづくりを促進する〞という松本市と協力した取組みの一環だ。
「せっかくならその歩行者天国にあわせて環境保全やエコについて考えるイベントをやろう」。そう考えた同商店街振興組合専務理事の松尾昭さんは、環境問題に詳しく、エネルギーの地産地消をめざす活動で知られる地元の団体「自然エネルギーネットまつもと」の平島安人さんに相談。
「私たちは、〝地域にあるものを活かすくらし〟を活動テーマにしています。蔵づくりの街並みを活かし続ける中町は、環境イベントを行うのにぴったりだと思いました」(平島さん)とすぐに意気投合。さらに地元の10団体と市の協力も得て、’21年8月から翌年1月まで全6回の「ゆっくりのんびり中町 ホコ天×エコ展」を企画する運びとなった。
メイン会場は、商店街の交流施設「蔵シック館」と駐車場。電気を使わず太陽の光を利用したソーラークッカーの展示や、子どもを対象にした地球にやさしい石鹸づくり、災害時の備えになるロケットストーブづくりなど、期間中は趣向を凝らした数々のブースが並んだ。
地元メディアが積極的に取り上げたこともあり、「最初は『エコって何?』と遠巻きに見ていた人たちが、回を重ねるごとに関心を高め、気軽にワークショップに参加してくれるようになりました」と松尾さん。取材で訪れた11月28日も、多くの人が歩行者天国をのんびり歩きながら、買い物のついでに展示を見たり、足の向くままブースに参加したりする姿が見られた。
「地方都市は車移動が多いので、ホコ天を実施して歩く人が増えること自体、十分エコなんです。それに商店街をゆっくり歩けば、人やお店との新たな出会いにもつながりますしね」と話すのは、「自然エネルギー信州ネット」の浅輪剛博さん。担当した「井戸端会議〝10年後の松本を描こう〞」という企画では、大人だけでなく子どもたちからも地域や商店街への期待や要望が多数寄せられた。
歩行者天国で考えるサステナブルな街の未来。エコストリートとして中町商店街の果たす役割は大きくなりそうだ。
「ゆっくりのんびり中町 ホコ天×エコ展」の具体的な内容とは?
’21年11月28日に行われたイベントの様子を見てみよう。
電気やガスを必要としない、災害時も使える燃焼器具として改めて注目されているロケットストーブ。化石燃料がなくても木片など身近な燃料で高火力が得られ、コンロ(熱調理器具)としても使用できる。
ストーブ本体のペール缶は地元企業から提供を受けたリユースで、ペール缶2個を組み合わせてつくる。力を要する作業もあるが、講師が手伝ってくれるので安心だ。
「憧れのロケットストーブをつくることができうれしいです。自宅で使うのが楽しみ!」 (参加者)
屋外ボードでは気候変動の現状や原因を紹介。円卓状ボードに付箋を使って、エコな街づくりのために10年後もあってほしいもの、なくなってほしいものを書き込む企画では、参加者同士で話が弾む姿も。「集計結果は行政などに届けることも考えています」(浅輪さん)
気候変動問題がテーマの投票ボードには質問と選択肢が書かれており、シールを貼って投票する仕組みになっている。
松本を拠点に活動する「ち9わぶ」による、子ども向けの体験会。前半は、プラスチックごみの海洋汚染に関する絵本を保育士が読み聞かせ。後半は、洗剤より環境の負担にならない石鹸づくりのワークショップを実施。就学前の子どもも楽しそうに参加していた。
「イベントを通して子どもたちにエコを体感してもらえて良かったです!」(出店者)
「憧れの信州古民家暮らし。でも冬が寒すぎる!」という問題を解決する断熱改修のワークショップは、家の断熱のポイントを講師のレクチャーで学んだあと、DIYにチャレンジする本格的な内容。工夫次第で快適さをあきらめずエネルギー消費量も減らせるということで、人気のブースとなった。
「大学で自然エネルギーについて学んでいるので、とても興味深かったです」(参加者)
イベント時に店舗を利用すると、
オリジナルの折り紙やメモ帳をプレゼント。
回遊性を高める工夫も。
’21年末から開催された松本城や市街地を中心としたイルミネーションで、
中町ではホコ天×エコ展の趣旨に合わせソーラー蓄電を一部使用し、
常夜灯のライトアップでレトロな雰囲気を演出。
★この記事は、商店街活性化の情報誌「EGAO」の2022 Spring(春号)に掲載されています。
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