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特集 SPECIAL TALK SESSION

人類が地球で暮らし続けていくために、2030年までに達成すべき目標が「SDGs(持続可能な開発目標)」。一体何から始めればいいのか途方に暮れる商店街もあるようだが、地域とSDGsに詳しいタレントの大桃美代子さんいわく実はSDGsとは〝特別なことではなく、生活の中にある〞もの。ナビゲーター小野寺愛さんの司会のもと、大桃さんと全国商店街支援センターの桑島俊彦との対談が実現した。

PROFILE

一般社団法人そっか共同代表 小野寺愛さん(左)
NGOピースボートに16年間勤務し、世界中を旅する中で「グローバルな課題の答えはローカルにある」と気づき、
神奈川県逗子市での地域活動に情熱を注ぐ。’21年まではTokyo FM「サステナ*デイズ」にて毎週の生放送で初代パーソナリティーを務め、
SDGsに取り組む国内外の大人と子どもたちを広く紹介。

タレント 大桃美代子さん (中)
一般社団法人 国際SDGs推進協会理事、新潟食料農業大学 客員教授。
タレントとして、ニュースをはじめ、バラエティ、情報番組と、幅広い分野で活躍。地域活性化に取り組む団体を支援するため
全国地方新聞と共同通信が設けた『地域再生大賞』選考委員を務め、さまざまな地域での取組みを紹介する講演が好評を得る。

全国商店街支援センター 代表取締役社長 桑島俊彦(右)
株式会社全国商店街支援センター代表取締役社長。
全国商店街振興組合連合会理事・最高顧問、東京都商店街振興組合連合会理事長、烏山駅前通り商店街振興組合(世田谷区)理事長を歴任。
商店街のスタンプ事業の先駆者。’12年春の叙勲では旭日中綬章を受章。


小野寺 SDGsという言葉ができる前から、商店街がやってきたことって実はSDGsだったのでは、と思うことがたくさんあるんです。お二人とも今までいろいろなかたちで商店街や地域にかかわってこられて、「これってSDGsだったな」と思うことはありますか?

桑島 私が理事長を務める烏山駅前通り商店街では、商店街で100円お買い上げごとにスタンプ1枚差し上げるスタンプ事業を、1965年からやってきました。スタンプ帳を1冊500円の地域通貨として、商店街で買い物ができたり、商店街のイベントに参加できたり、地元の金融機関に預金ができたり。それがどんどん進化して、ボランティアポイント、ノー包装ポイント、リサイクルポイントなどができて。たとえば、月に1回日曜の朝に街の清掃に参加すると、ボランティアポイントとして100Pを差し上げています。清掃を始めたおかげで、街に落書きが全然なくなったし、みんな街を汚さなくなりましたね。

「SDGs」なんてハイカラだけどそれってまさしく商店街活動の原点ですよ

大桃 「割れ窓理論」の逆説ですね。割れた窓をそのままにすると、管理されていないと思われて、さらに環境が悪化する、という話の逆。

小野寺 それって、「住み続けられる街づくり」。まさにSDGsですね。

大桃 それにしても、桑島さんがポイントについて語る時の目が違う(笑)。人間、どこか得したい気持ちってありますよね。

桑島 ゲーム感覚なんですよ。400P=500円なので、大した金額ではないですが(笑)。それでも楽しみながら街のために活動してポイントを貯めていらっしゃいます。今ではスタンプカードは、〝高齢者見守り機能〞も付いたICカードになっているんですよ。

商店街で一番大事なもの、それは「信用」


大桃 私は秋田県の「にかほ出前商店街」を取材したことがあるんですが、にかほってお店が点在していて買い物に行くのが大変。そこで、月2回公民館に商店が集まるんです。電池1個50円くらいで売っていて「これ儲かるんですか?」って聞いたら、「いや、ここで儲けようとは思ってないです。(高齢者の)皆さんが元気かなと思って」と。 でもそれがちゃんと商売につながっている。たとえば包丁研ぎサービスの方は、本業が建築業でした。包丁を研ぐ間に、お客さんといろんな話をしますよね。「お嫁さんが、うちのお風呂が古いって言うんだよね」とか。そこで、「それ、うちで新しくできますよ」「じゃあお願い」と話が進展する。人と人が何回も会って、ちゃんと信頼関係を築いて「実はね……」が出るまで待つ商売って、大型店じゃできないと感じました。

上)超高齢化社会が進む秋田県にかほ市で、’10年から開催されている「にかほ出前商店街」。買い物だけでなく、地域住民の大切なコミュニケーションの場にもなっている。下)交流スペースでの弁当販売も大切なサービスのひとつ

桑島 「損して得取れ」ですね。

大桃 その「損して得取れ」なんですが、立川志の輔さんの落語に、商店街を舞台にした「ガラガラ」という話があるのをご存知ですか?年末のセールの時期に〝ガラポン〞で抽選会をやるんですけど、1等は1個だけで、「豪華客船の世界一周ペア旅行」。初日に1等がポンと出て、「よかったよかった」と言ってたら、なんともう1個カランと1等が出る(笑)

桑島・小野寺 ええー!?(笑)

大桃 実は誤って1等が7個入っていて、そのうちの2個が出てしまったんです。7個全部1等を認めたら、商店街は破産かも。こんな時桑島さんだったらどうします? 私だったら、出ちゃった2個以外は無効にしちゃいますけど。

桑島 それはだめでしょう。もう公になっているんだったら、7個全部、商店街が負担しないと。そうじゃないと信用がなくなっちゃう。

大桃 さすが。このお話も、商店街の役員の一人が「この中に1等があと5個入っています。それもすべて商店街が負担します!」って宣言するんです。すると1等欲しさにお客さんが通りのずーっと向こうまで並んで、結局商店街は繁盛しましたよ、という落ちでした。

桑島 信用って大切だから。

大桃 でもその潔さがすごい!私は、そういう信用できる人がいる地域で互いを信頼し合って暮らせるのは幸せなことだと思います。そうしたつながりを大事にするのって、それこそまさにSDGsですよね。

カリスマリーダーより一人ひとりの声が大事


桑島 商店街で大事なのは、やっぱり人間関係です。商店街組織ってみんな一国一城の主で、関係がフラット。だから、上に立つ人が人心の掌握をして人間関係をつくるには、それだけの人柄が必要です。昔は「先輩だから従おう」という考えがあったけど、今の若い人はそうじゃない。

小野寺 数十年前までは年齢によって経験からくる情報量に差があったのが、今やインターネットからいくらでも情報を取れる時代。求められるリーダー像も変わってきたのでは?

大桃 旧来型の成功事例って、カリスマリーダーがいてそこから派生するかたちが多かったけれど、今は「ここって誰がリーダーですか?」って聞いても「なんかよくわかんないです」みたいなところのほうが新しいことをやっていて、面白いです。

小野寺 「多様性の社会」ということですね。全国を見ていて、そういう事例はありますか?

商店街が元気で、つながりがある。
私もそんな幸せな街に住みたいです!

大桃 北海道恵庭市の恵み野地区。花ロードで有名になったところです。30年ほど前に、一人のガーデニング好きな女性が、フラワーガーデニングコンテストとして個人宅のお庭を勝手に審査して、表彰し始めたんです。そうしたら、その庭づくりを真似したりしながら、街の中にだんだん素敵な庭のお宅が増えて、地元の商店会や恵庭市も一緒に商店街の前の花壇を整備することになって、通り全体がガーデンギャラリーになったんです。商店街自体も活気づいて、若い世代を中心に、他にもいろんな取組みをするようになったそうですよ。

一人の女性から、商店会や町内会、学校、恵庭市などを巻き込んだ取組みに広がった、北海道恵庭市の花の街づくり

小野寺 誰かに言われてやるのではなく、ガーデニング好きな人が自主的に始めて、それが素敵だからと広まったんですね!

大桃 花ロードが有名になって、全国から人が見に来るようになって。最初は主催者が実費でコンテストの表彰を行っていたのが、商店街の植樹に市から助成金が出るようになったりして、今では街全体で取り組んでいるらしいです。

住民と一緒になって行政に働きかける


桑島 一人の住民の方の提案が、街全体で取り組む「まちなか観光」につながったわけですね。そういうこと、私たちの地域の清掃活動でもありました。ある時参加者の一人が、「商店街の通りの舗装が老朽化して傷んできて、雨が降ったら水たまりができるし、夏は表面温度が55℃にもなる。車椅子の方やペットにとって非常に歩きにくい。これを、遮熱剤を使って整備したら、10℃下がるよ」って言うんです。完全なユニバーサルデザインにできるはずだと。その話をもって世田谷区の道路部長のところに行ったら、「これは住民ニーズですか、商店街のニーズですか?」と聞かれたので、「住民が提案してくれて、商店街はアテンド役です」って。そしたら、区が整備費用を全額負担してくれました。住民からの提案が実を結んだんです。

小野寺 すごい!その提案が出てきたのも、みんなで清掃活動をしていたからですよね。

木を植えたからSDGsじゃない。
商店街に昔からあるものがそうなんですね

桑島 そういう運動って目に見えるようにやらないといけないんです。まず商店街で始めて、町会や自治会に声をかけて、政治家にも賛同してもらう。政治って「不可能を可能にする芸術」みたいなところがあるんですよ。住民の方々のニーズを聞いたり、住民と一緒にやっていったりすると、商店街のインフラ整備はかなり具現化できると思います。

小野寺 こういう活動を商店街が堂々とやってもいいんだよと多くの方に伝えたいです。

桑島 それと、私たちは消費者懇談会も定期的に開催しています。商店街で買い物をされている住民の方20人ぐらいに集まっていただいて意見をうかがう。報告書を必ず提出するということで区からも支援していただく。消費者から直接意見を聞くことで、我々商店街も自らを律していかなければいけないし、役所にもものを言っていく。そうやってボトムアップしていけば、商店街の活動も生きてくるとうんです。商店街ってある意味で公共財。公共財として伸びていくには、自治体の理解や協力を得て、政治の力を発揮してもらうことが必要だと思います。商店街は手柄などいりません。自分たちの街の価値を上げていけば、必然的にさまざま方向からいいものが返ってきます。

小野寺 住民一人ひとりの声を聞いて、商店街はつなぎ役として、それを行政に伝える。それがSDGsでいう「パートナーシップ」であり、「誰も取り残さない社会」をつくるっていうことですよね。

小野寺 さて、「誰も取り残さない社会」というのは、SDGsの17の目標の根底にある原則なのですが、このために地域密着型の商店街だからできることがあると思います。そんな事例は何かご存知ですか?

大桃 『とくし丸』という移動商店の取組みがあります。これは地元のスーパーや商店と協力して、軽トラックに食料品や生活雑貨を積み込んで家々を回るんです。ドライバーは働くママさんが多くて、回った時に「次は何がほしい?」って聞いたり、「あのおじいちゃん、この魚が好きなのよね」ってニーズを把握していたりして、ちゃんと必要なものを届けてくれる。徳島から始まって今では全国展開されて、買い物難民を支えるだけでなく、地域の見守りにもなっているようです。

桑島 買い物難民の問題は相当深刻です。世田谷区商店街連合会でも、商店街で扱っている食料品や日用品を身近で買えるように、有志でNPOを立ち上げて買い物支援事業を始めました。冷蔵庫つきの軽トラックで移動販売もしています。武蔵村山市には、輪タクのような自転車で、買い物に行きたい人を送迎するサービスもあります。

小野寺 商店街のお店が協力し合えば「誰も取り残さない」社会が実現できますね!SDGs達成には商店街が元気になること!

大桃 地方では特に、商店街ってライフラインですよね。商店街はまちの財産で、元気でいてくれないと生活が不便になる。

桑島 まさに、商店街はコミュニティの担い手。安全、安心、環境、子育て、食育、お年寄りの相談相手、文化の創造・伝承などを地域の方とともに担う。祭りなんてその典型です。イベントって平時における防災訓練の側面もあって、祭りで協力し合うと非常に人間関係が深くなって、防災の隣組意識ができるんです。SDGsなんていうとハイカラですけど、商店街活動の原点はまさしく今日流にいうSDGsだと思いますよ。

小野寺 確かに。木を植えたり、ソーラーパネルを付けたりしたからSDGsではない。実は昔から地域コミュニティにあったものを、違う言葉で言い直しているだけだと思います。

大桃 SDGsって特別なことじゃなくて、生活の中にあるものですよね。自分の生活を守ることがSDGsで、商店街が元気にやっていることがSDGs。商店街は防災・減災の役割も果たしていて、何かあった時にも商店街に助けてもらうことになる。私は、商店街がいろんな方たちにとって暮らしやすい街づくりをしてくれていることへの感謝を、いつも心に留めておきたいなと思います。

小野寺 つながりと幸せを感じられるコミュニティの担い手が、商店街ですよね。商店街が元気になれば、ことさらSDGsと言わなくても、みんなが幸せな社会を実現できそうですね。

難しそうに思えるSDGs。しかし、具体的な事例から、商店街の日常の活動のなかにSDGsがあり、それが再注目される時代になってきたことがわかった。

★この記事は、商店街活性化の情報誌「EGAO」の2022 Spring(春号)に掲載されています。
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