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活性化事例

商店街が主催する“ツアー”で空き店舗と出店希望者をマッチング

空き店舗総合支援

空店舗活用

創業・事業承継

事業名 空き店舗総合支援パッケージ事業
商店街名 門司中央市場商業協同組合/福岡県北九州市

戦後から60年以上、地域に密着した生鮮市場として親しまれてきた北九州市の「門司中央市場」。時代の流れとともに入居店舗数が減少している危機的状況に、〝市場の歴史に幕を閉ざすまい〟と出店者を呼び込むための奮闘が始まった。

<<この事業の魅力!>>
市場所有の小規模物件を貸店舗化し、「貸店舗ツアー」と「お試し出店」を企画。独自のアイデアと相乗効果を生み出す工夫で出店、創業を支援。

「貸店舗ツアー」の様子。物件見学では飲食、物販希望のグループに分かれ、北九州商工会議所のメンバ ーが案内

新規出店者を迎えるべく市場内の環境を整備

 明治時代に開港した門司港沿いには当時の西洋建築を保存する「門司港レトロ地区」が整備され、今では年間200万人以上が訪れる観光地となっている。その一角で戦後に生鮮市場として始まり、地域住民の食卓を支えてきたのが門司中央市場だ。

 近年、店主の高齢化や後継者不足などの理由から廃業する店が相次ぎ、現在は76ある物件に対し、入居数は28店舗に減少。門司中央市場商業協同組合の理事長・秋吉修さんは、「このまま何も手を打たなければ近い将来、市場の歴史が終わってしまう。けれど、何をやるにしても受け皿としての環境が整わなくては始められない。まずは〝ここで商いをやってみたい〞と思える市場内の環境整備が急務でした」と振り返る。

 6年前に理事長に就任した当時、老朽化した市場内には26カ所の雨漏りがあったという。それを組合員とともにコツコツと修繕と改修を行い、市場のイメージアップを地道に推し進めてきた。そして徐々に出店者を迎え入れる地盤が固まりつつある中で、’21年夏、次なる一手として「空き店舗総合支援パッケージ事業」の活用を決断した。「新規出店に興味をもつ人に向けた『貸し店舗ツアー』と『お試し出店』を企画し、本格出店に確実につなぎたいという思いがありました」と、秋吉さんは語る。

組合所有の物件を強みに具体的な動きへ加速!
参加者と市場内の店主たちが笑顔であいさつを交わすなど和やかなムードで進められた

 実行に向けて強みとなったのは、組合が独自の空き店舗対策として市場内のすべての空き物件を買い上げ、所有管理していたことだ。通常「貸店舗ツアー」の実施には、事前の物件調査や貸し店舗化へ向けた地権者との交渉が不可欠だが、今回はその作業にかける時間が大幅に短縮でき、案内する物件の選出がスムーズに行われた。

北九州商工会議所門司サービスセンターの神﨑千尋さん(左)、池田由樹さん

 紹介する20物件は、ほとんどが15㎡以下の小規模物件で、賃料3万円台。コロナ禍の今、初心者でもチャレンジしやすいというメリットも確認できた。

 参加者の募集では、協力をあおいだ商工会議所や市の広報媒体はもちろん、より広く知ってもらうため隣接する地域にもチラシをポスティング。さらにフェイスブックなどSNSでも情報発信を続けた結果、SNSを通じた問い合わせも増加。直前の受付も可能にしたことで、想定を超える23組35名の応募があり、飲食と物販希望者の2グループ4班に分けてツアーを組むという、うれしい事態になった。

工夫とアイデアで貸店舗ツアーの効果を倍増
理事長の秋吉修さん。市場内で困ったことがあればすぐに相談に乗ってくれる頼もしい存在だ

 ’21年11月20日、いよいよ開催された貸し店舗ツアーは、秋吉さんによる同市場の概要説明から始まった。そして、空き店舗対策の専門家によるミニ講座「失敗しない物件選びのポイント」が実施され、小規模物件が集まる市場の特徴にリンクした内容でチェックすべき箇所が丁寧に説明された。さらに、工事費などの初期費用が抑えられ、ワンオペも可能であるなどの利点もしっかりと伝えられる。参加者たちは実際の物件見学で、設備や動線など、講座のポイントを踏まえながら効率よく確認した。商工会議所と市による、創業者向けサポート策や補助制度の紹介も行われ、その後の質疑応答では、出店を想定した具体的な質問が続出、有益な情報の共有ができた。

 当日は、空き店舗を活用した「蚤の市」も同時開催。これは参加者に出店イメージを描いてもらうとともに、市場内ににぎわいを創出することで商機を感じとってもらおうという秋吉さんの発案だ。終了後には「蚤の市で可愛くディスプレイされたブースを見て自分の出店イメージが具体的に思い描けた」「市場のレトロな雰囲気が自分の理想のお店とマッチしていることがわかった」といった感想が寄せられていた。

参加者の声!田原昌育さん
古着のネットショップを経営中で実店舗の出店に向け、ツアーに参加。「自分のやりたい店と市場の空気が合っていると感じました。ぜひお試し出店したいと思いました」

「秋吉さんは実行力に長けたアイデアマン。何をすれば効果を呼ぶか一歩先を見据えて準備を進め、その気概が多数の方の参加につながったと思います」と話すのは、事業をアシストしてきた北九州商工会議所門司サービスセンターの池田由樹さん。同サービスセンター長の神﨑千尋さんも、「飛び込み参加の方もあり、大きな手ごたえを感じました。今後も多くの人に中央市場の魅力を知ってもらい出店の地に選んでもらえるようサポートしていきます」と意欲をのぞかせる。

 その後、当日の参加者から4組のお試し出店が決定。「私たちの役目は市場で商いを行う個店に向けて〝舞台〞をつくること。これからも昔から市場に流れる懐かしい空気や人の温もりを大事にしつつ出店者を迎える環境づくりに力を注いでいきます」と秋吉さんは笑顔を見せた。

「蚤の市」を同日開催

 空き店舗内に雑貨店や、地元の大学が母体のフェアトレードショップが出店し、にぎわいの創出と出店イメージを醸成。蚤の市の参加者から新規出店者を呼び込む機会も生んだ。組合独自の企画で市場内の周回性を高めるスタンプラリーも開催。親子連れも多く訪れた。

関連リンク

この支援事業について詳しくは  空き店舗総合支援パッケージ

★この記事は、商店街活性化の情報誌「EGAO」の2022 Spring(春号)に掲載されています。
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