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活性化事例

コワークからクラウドファンディングまで商店街発・まちづくり会社だからできること

地域振興

各種連携

商店街名 株式会社まちづくり立川/東京都立川市

多摩地区の「住みたい街ランキング」で1位に選ばれた立川。この街に新しい旋風を巻き起こす、元気なまちづくり会社がある。大規模開発で変貌する街で、自らのアイデンティティを求めて立ち上がった“地の者”たちのストーリーを追う。

「まちづくり立川」の社員たち。男性4人は立ち上げメンバー。
左から、まちづくり立川 取締役副社長 小澤清富さん、代表取締役社長 岩下光明さん、取締役副社長 五十嵐陸夫さん、取締役副社長 長井琢英さん。
「ビジネスうんぬんより、まず何より自分たちが楽しくないと続かないで す」と口を揃える。その絆はとても強い

商店街から純民間運営のまちづくり会社が誕生
さまざまな学びの場へ参加

多摩地区を代表する商業都市、立川市。立川駅の南口エリアでは、昭和41年から長きにわたる土地区画整理事業が実施され、近年では市役所が北口に移転するなど、絶え間なく大規模開発にさらされてきた。「親の代から50年も区画整理が続けば、大抵の店は商売を続けられないですよ。駅前に商業施設はできましたが、地元の人がやっていた昔ながらの店はほとんどなくなってしまいました」

そう話すのは、南口エリアの10 の商店街を束ねる立川南口商店街連合会会長の小澤清富さん(西通り西会商店会会長なども兼務)。目まぐるしく変わる街の姿に、「このままでは自分たちが育った立川の街が衰退してしまう」と危機感を募らせ、まちづくりの道に進むことを決めた若手有志のひとりだ。

同連合会や立川南口まちづくり協議会などで中心メンバーとして活躍していた有志たちは、自分たちができるまちづくりの方法を探っていった。そして2014年3月、「株式会社まちづくり立川」を設立する。
「まちづくり立川」の創設メンバーは6人。彼らは、全員が立川育ちで、南口エリアで商いを営むという共通項はあるものの、それぞれが異なる商店街に属して地域活動に携わってきたため、互いに旧知の仲と言うわけではなかった。

つまり「まちづくり立川」は、立川というひとつの枠組みの中に身を置きつつも、異なるバックグラウンドを持つメンバーが、異なる経験に裏打ちされたアイデアを持ち寄り、しがらみのない対等な関係のなかで検討し実現していく場となる。「メンバーそれぞれに独自のビジネスや地域の活動で得たコネクション、情報、経験があります。それを合わせたら視野もアイデアもぐっと広がる。メンバーの知見を一体化させたら、地域全体の発展と継続に寄与できるいい組織になるに違いないと確信しました」と、「まちづくり立川」の取締役社長・岩下光明さん(錦商店街振興組合専務理事なども兼務)は、会社設立の理由を明かす。「まちづくり立川」は、4 商店街と2つの信金はじめ地元企業約30社の出資を受けて設立する純民間資本の株式会社だ。〝純 民間〞のかたちにこだわったのは、「メンバーが得意分野を活かして自由に活動できるようにするためと、目まぐるしく変化する社会にスピード感をもって対応するために、受ける可能性のある制約を最小限に抑えたかった」(岩下さん)から。

6人の発起人は、各自の能力を最大限に活用しながら、収益をあげて自走できる事業を行うことで、地域の課題を解決し、さらには、立川にしかない魅力を開発・発信して、「立川をファンであふれる街にしよう」と 心に誓った。

街を俯瞰的に捉え5年で多彩な事業を展開
農産物直売所「地元農家のとれたて野菜のーかる」

最初に取り組んだのは、商農連携事業だった。2013 年末に立川駅南口近くのJA直売所が、地域住民の存続を求める署名運動にもかかわらず撤退。「まちづくり立川」は、その店舗跡を活用し、隣市の野菜販売業者と共同で「地元農家のとれたて野菜のーかる」を運営することになった。

近隣地域に生鮮食料品店が不足している状況を補うことを目的として始めたこの事業は、地元の小規模農家の救済という面においても大きな成果へとつながっていく。「立川の北部には多くの農家さんがいますが、少子高齢化で人手不足。それまで直売所で委託販売するのは、つくった野菜を運び込んだり、売れ残りを回収したりと手間がかかって大変だ ったんです。農業を止めてしまおうと思っていたところもある。そこで、うち(のーかる)のスタッフが1日2回集荷に回り、野菜を買い取ることにしたんです。すると、農家さんの負担はぐっと減り、野菜も安く提供できるようになって、農家さんも、お客さんも両方とも大喜び。『のーかる』は、地元の農業をしっかり守っているんですよ」と長井琢英さん(立川市商店街振興組合連合会常任理事、立川南口いろは通り商店街振興組合 理事長なども兼務)。

さらにエリアのスーパーには出回らない珍しい野菜も含め、美味しい野菜が安く販売されていることから、主婦層だけでなく商店街の飲食店店主たちも「地元野菜を使った料理をつくりたい」と毎朝買い付けに来るように。のーかるのスタッフが、農家から野菜の美味しい食べ方も聞いて来て、それを店先で伝 えることで、地元の農家、住民、商店街の店主たちがつながって いった。
現在では、料理人からリクエストを受け、作付けする農家も出てきており、のーかるを通じたマーケティング機能が、地域経済を循環させている。

街のアイデンティティを次代に残すために

「人口減少社会になると人材面でも地域格差が如実に出てきます。若くて創業意欲のある人材を集めることが街の成長には不可欠。そこで、若者の起業をサポートする事業にも、私たちは積極的に取り組んでいます」と五十嵐陸夫さん(立川市商店 街振興組合連合会常任理事、すずらん通り商店街振興組合副理事長も兼務)が語るように、同社は、創業者支援につながる事業も複数展開している。

2014年のオープンタイプのシェアオフィス「TXT」を皮切りに、2015 年にはブースタイプのシェアオフィス「KODACHI」 を、2018 年には総合型ものづくりサポート施設「Tschool」と、才能豊かな若い人材を支援する施設を次々と開設。これらのシェアスペースで出会った者同士から、複数のコラボレーション事業が生まれているという。加えて、立川周辺の地域を盛り上げるクラウドファンディングサイトも運営し、夢を持つ人々の資金調達も応援する。
多角的な事業展開を行いながら、3 年目で単年黒字を計上するなど、経営面でも順調な「まちづくり立川」。刻々と変化する社会で、街のアイデンティティをどう残し、豊かな社会を実 現するかー。〝地の者〞としての心意気をもって地域に寄り添い、人と街をつなげている「まちづくり立川」の活動は、そのひとつの〝解〞を示唆している。

★この記事は、商店街活性化の情報誌「EGAO」の2019 Spring(春号)に掲載されています。
「EGAO」をご覧になりたい方はこちらへ。

商店街活性化の情報誌「EGAO」

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