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活性化事例

次世代の商店街に求められること。

地域振興

個店活性

特集 広報「EGAO 2019 Spring」対談

テクノロジーの進化や社会情勢の変化は商店街にも影響を与えずにはいられない。
日本経済の最前線に身を置いてきた近藤賢二さんと、全国商店街支援センターの桑島俊彦が商店街の未来について多角的に議論した。

Profile

近藤賢二さん(左)
1954年生まれ。公益財団法人世田谷区産業振興公社 理事長。通商産業省に入省し、経済産業省商務情報政策局長、内閣官房内閣審議官・知的財産戦略推進事務局長など要職を歴任。
’12年三菱電機株式会社に転じ、専務執行役開発本部長などを経て、’17年より現職。

桑島俊彦(右)
1941年生まれ。株式会社全国商店街支援センター 代表取締役社長。
全国商店街振興組合連合会理事・最高顧問、東京都商店街振興組合連合会理事長など要職を歴任。
世田谷で化粧品店を営む店主でもある。’12年春の叙勲では旭日中綬章を受章。’09 年より現職。

日本の生活様式に商店街は不可欠

桑島 近藤さんは、これまで経産省や大企業の立場から、日本と世界の経済に携わってこられました。そんな近藤さんの目に、商店街はどう映りますか?

「商店街の本質は、豊かな暮らしを支えるプラットフォーム」

近藤 日本は中小企業に支えられている国です。約380万の企業のうち、実に99・7%が中小企業。そして、言うまでもなく商店街は中小企業の集まりです。ですから日本の経済を考える上で、商店街の活況は非常に大切なポイントです。また、商店街は日本人の生活様式や文化と密接に結びついている点でも重要です。私は毎日新鮮な野菜や魚を食べることに幸せを感じますが、日本人なら大抵がそうでしょう。つまり日本人の買い物は、必要なものを毎日のように買う「多品種小量買い」のスタイルなんです。でも、アメリカだと、週に一度スーパーに行って山のように食材を買い込み、巨大な冷凍庫や貯蔵室にそのままドンと入れて、それを一週間使って食べ切る。日本人とは大きく異なります。そんな日本人の生活にしっくりくるのが、商店街。今後もその役割が終わることはないと思います。 

桑島 活きのいい魚を買って、ついでに美味しい調理法なんかも店主から教わる。それが日本人の幸せな生活のかたち。つまり商店街は、我々の豊かな暮らしを支えるプラットフォームということですね。

近藤 それは地域住民だけでなく、海外からの観光客も魅了する可能性も高い。最近のインバウンドは体験型のコンテンツが求められるようになっています。相撲観戦に行き、そこで横綱の名前が入った手拭を買うというような、日本の文化を知るコトにモノが紐付いてくる消費行動です。その舞台として、日本人らしい暮らしを実感できる商店街はふさわしい。 

桑島 
その通りですね。商店街でのつまみ食いウォーキングなど「まちなか観光」が最近好評です。街を知り、体感してもらう。そんなコンテンツが国内の観光客だけでなく海外の観光客にも求められてきています。

複数の組織が連携して新たな価値を創出する

桑島 しかし一方で、商店街の経済的な苦境は長く続いています。商店街が生き残るためには、過度な価格競争や過剰な利便性の追求と一線を画すべき。そして、新たな価値やサービスを提供し、公共的役割を進化させること。店単体ではなく、商店〝街〞だからこそできることを追求することが大切で、そのために考えるべきは、「組織力」ではないでしょうか。

近藤 商店街のメリットはみんなで連携してアクションを起こせること。そこに、インパクトが生まれます。商店街がまとまって何かをする。反響があれば人も集まり連携も生まれます。

桑島 行政や教育機関、NPO、町会、自治会、社会福祉団体など、地域に関係する団体と連携することが大切ですね。行政にとっても、商店街が起点となり自主的に地域活性化を行うところに助成するというかたちで協力すれば、直接事業を行うよりはるかにローコストで済みます。

近藤   助成だけでなく、商店街組織自体が利益を追求し、その稼ぎを地域への投資に還元する仕組みづくりも重要なのではないでしょうか。地域のステークホルダーたちが協力し合い、街の経済がめぐることも望ましい。その視点から次世代の新しい商店街組織のかたちも生まれてくるのではないかと思います。

桑島 私は商店街の重要な役割のひとつに、住民のニーズを行政に届ける「ボトムアップ」があると考えています。行政に、民間の提案を真摯に受け止めてもらい、前例主義から脱却した対応をしてもらう。まちづくりのベクトルは「ハート」「ソフト」「ハード」。ハートは人と人のつながり。ソフトはイベントなどを通した連帯意識の向上。ハードは環境整備。特にハードの部分は、行政との連携が不可欠で、そこで商店街がイニシアチブを取ることも考えたい。

近藤   これからは高齢化社会に対応できるまちづくりも必須です。65 歳以上が高齢者と言われていますが、今働いている方がリタイアするのは70 歳か75 歳。そこで、高齢者の声を聞きながら、彼らが生きがいを感じられる場として商店街を機能させることも大切になるでしょう。

桑島   「地域コミュニティの担い手」としての商店街の存在意義ですね。定年後、引き込もりがちになる人は多いと聞きます。ところが、彼らの知見というのは地域の発展に寄与するもの。地域に埋もれている人材を表舞台に出せるか否かも、今後のまちづくりの鍵となりそうですね。

近藤   まちづくりというのは、人々が楽しく暮らすための仕組みづくりです。地域のみなさんと一緒に、地域に密着した取組みを通して、そこに住む人や、そこへ行きたい人に愛される商店街がたくさん生まれたらいいと願っています。

桑島   やはり、そのためには人心掌握術に長けたリーダーも必 要になりますね。全国商店街支援センターは専門家を派遣して、将来の商店街を担う人材育成のサポートをさせてもらっています。こうした取組みから、地域社会から評価される商店街をさらに増やしていきたいです。

テクノロジーへの順応と体温あるサービスを融合

近藤 好むと好まざるとにかかわらず、テクノロジーはどんどん進化し、私たちの社会を変えていきます。例えば今、キャッシュレス化への対応が大きな議論を呼んでいますよね。いろいろな問題点もありますが、キャッシュレス化は決済の透明化につながり、決済トラブルも解消できるというメ リットもあります。

「進化する社会に目を向け、変化に対応した取組みを」

桑島 おっしゃる通り、キャッシュレス化は利便性向上には大きく寄与します。ただ、マイナス面もある。支払手数料は利益率の低下につながりますし、現金化するまでのタイムラグも課題です。政府が目指すキャシュレス40 %という数字を実現するには、行政がただ導入を促すだけでなく、手数料の低減や決済後すぐに入金されるような環境整備を、停電時など万が一のトラブルの対応も含めてセットで行っていく必要があります。それこそ、ボトムアップで私たちも声をあげていきたい。

近藤 ちなみに北欧では銀行口座と直結した形で処理をするので、手数料は取られません。そうした事例も踏まえると、今は過渡期ですね。ただ、キャッシュレス以外でもテクノロジー化 が進み、第四次産業革命と呼ばれる時代がすぐそこまで来ています。IoTですべてのものがつながり、ビッグデータをAI で運用していく-そんな時代 に商店街はどう対応するのか。 テクノロジーの過信は問題ですが、何もしなければ時代から取り残されてしまいます。進化するテクノロジーへの「順応力」 は身につけておくべきでしょう。

桑島 同感です。ただ、テクノ ロジーが進化すれど、やはり商店街ならではの魅力は「温かみ」 にあると考えています。私の属する千歳烏山の商店街だと、小学生が商店街で職業体験をします。そのときに、化粧品店では ハンドクリームでマッサージしてあげるんです。そうすると、その子たちは祖父母を連れてまたお店に来てくれます。

近藤 ネットでは手を触ることはできないですからね。そのような体温のあるサービスにテク ノロジーの良い点をうまく組み合わせることができれば、ネット社会でも負けませんよ。

桑島 本日はたくさんのお話をありがとうございました。

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