


人の買物行動のプロセスは2段階ある。1番目の壁が「買いたいか買いたくないか」、2番目の壁が「買えるか買えないか」だ。お金がなくて本当に買えないときもあるが、多くの人は、本当に買いたい商品があるとなんとかして購入するものだ。そのため、「買いたいか買いたくないか」の壁を破ることができれば売れる可能性は高くなる。実は売上げは、売り手が「買いたい」のスイッチを押し続けることで、計画的につくっていくことができるのだ。
では、どうしたら「買いたい」と思ってもらえるのか。キーワードは感性だ。感性とは「このブランドが好き」「あの会社はいい」といった気持ちを生む脳の高次情報処理のことだが、感性に影響を与え得る情報を発信することで、お客様のなかに買いたいという感情を喚起できる。
たとえばワインを売る際に、「フランス産ワイン」のコピーだけで買いたいと思う人はほとんどいないだろう。では「天才醸造家がフランス政府に逆らってまで作ったフランスワイン」ならどうか。買いたくなる人が増えるはずだ。高額な椅子でも「人生観が変わる椅子」と表現したところ大きく売上げが伸びた店がある。こうして、感性に影響を与えると、お客様のなかに商品に対して「価値」が産まれ購買意欲が生じるのだ。
これによって売上げは伸びるが、「毎日行きたくなる店」になることでさらに数字を上げることができる。来店頻度が高くなれば当然購買チャンスも増えるからだ。その条件の1つはお客様の買いたいのスイッチを押せること、もう1つが「絆」だ。絆を築くために有効なものの一つがニューズレターで、そこにプライベートな出来事を書くことで「自己開示の法則」により、絆を構築することができる。
絆構築のメリットは、安売りや値引きの必要が減るため粗利益が高くなる、口コミや紹介が増えるなど数多いが、なかでも大きいのが仕事が楽しくなることだ。
商店街を活性化させるには、まずこうした取り組みを1店1店が行うこと。それによって活気ある店が少しずつ増えて、人通りも多くなっていくはずだ。そして、その商店街を地域コミュニティと結びつけることで、商店街、地域全体がますます活気づくのではないかと考えている。お客様は人生をワクワクさせてくれるのを待っている。ぜひ新しい商業の形をつくってほしい。
現在、日本経済は不透明な状況にあるが、それは数字にもよく表れている。株価は20年前と比べると4分の1にまで下がり、サラリーマンの年間所得も20年前とほとんど変わっていない。つまり、日本人の所得はほとんど増えていないのだ。
その原因は、人口減少と高齢化、中国などの新興国の台頭、そしてグローバル化の進展による空洞化だ。日本でモノをつくらなくなってしまい、商店街はもちろん、大企業ですら所得を生み出すのが難しくなってしまっているのだ。
所得を増やす方法は「付加価値」だ。小売店なら品揃えやサービス、製造業なら素材に加工を加えることだ。その付加価値が高かければ雇用も増え所得も上がる。当然商店街も活気づくはずだ。
付加価値を生むためには、1次、2次、3次産業の連携が必要だ。農産物なら地域の農業や工場と連携し、何をつくるべきか、それをどう加工し、どこで売るべきかを吟味する。そうした「創造的情報機能」を卸売業が担えば、商店街も活性化するはずだ。
今、商店街はショッピング情報ばかりになっているが、地域に根ざしたサービスも必要だ。商店街のPB商品、宅配システム、託児所など、商店街が担うべき役割をもっと実現すべきだ。
また「面」として商店街をとらえる必要もある。商店街の再編、再開発はもちろん、都会ならオフィス街、農村なら里山との連携も考えたい。
フランスにはマルシェという市場がある。外国人も集まるなど大変なにぎわいだ。日本の商店街もマルシェ化し、周辺の施設などと絡め、周遊バスなども導入すれば「まちツーリズム」にもなる。また地域通貨をつくってみるのも方法だ。
連携によって、ぜひ地域の活性化を図ってほしい。
箸は家に余っていてすぐに欲しいものでもない。にもかかわらず箸で30年も商売を続けていられるのは「恋」と「愛」があったからだ。恋は下心、愛は真心。つまり商売には、売るための工夫とお客様への思いが大事だということだ。具体的には「4つの恋と1つの愛」が必要だと思っている。
1つ目の恋は「現場のつぶやき」。お客様が求める商品は「問題を解決してくれるもの」か「幸せになれること」の2つしかなく、これは現場のつぶやきを聞くことでわかる。コツは褒めること。すると必ず「でもねぇ~」と困ったことを話し出す。それをPOPに入れるだけで必ず反応が上がる。
2つ目は「売れる仕掛けを探すこと」。大事なのは「ネーミング」「絵」「形」「予告」。
たとえば六角形にした箸に「知能箸」と名づけたところヒットした。ネーミングを工夫し、さらに絵で伝え変わった形で表現すると、商品の価値がより伝わるのだ。また予告があることで人は好奇心をもつ。飲食店ならシャッターに「今日は金曜日です。1週間お疲れ様。本日はウナギのかば焼!」と紙に書いて貼っておくだけで違う。
3つ目は「100縁市」。メガネ店はメガネの店頭でメガネの洗浄をし、仏壇店はロウソクから売っている。まずは小さいものから売るのだ。4つ目は「3Tの商いに徹する」こと。3Tとは「とく」「ため」「たのしい」で、人はそうした要素がある場所に集まる。
1つの愛とは「片手にソロバン 片手にバラの花」。皮算用の一方で人様のためになるという理念が必要だということだ。
商いは、あの手この手にもう一丁。おもしろいなと思ったものは、どんどん真似すればいい。みんなそこから始めているのだ。
「不景気だから儲からない」といった声を耳にするが、本当だろうか。
奈良県の山奥でやき餅を売っている店がある。非常に不便な場所だが大人気だ。兵庫のあるケーキ屋さんでは毎日行列ができ、並んでいる人に声をかけると京都や名古屋から来ているという。売れてない店と何が違うのだろうか?それは「商品」がいいからだ。商売人は商品を研究しなければダメなのだ。もっというなら、
商品、お客、価格、サービスだ。これらを研究する以外に、商売がうまくいく方法などない。
よく「うまくやって儲けよう」と考える人がいるが、そんなうまい話はどこにもない。それは、お客様は決して人を儲けさせようと思って商品を買うわけではないからだ。考えるのは、どうしたら自分は得ができるか。だからこそお客様のことを知り、どうすれば得と思ってくれるのかを徹底して考えなければならない。うちの会社は靴下を売っている。お客様の好みを知るために日々情報収集をしているが、本当に必死の思いだ。売れないときは猛省し、理由をとことん考えてきた。
決して安売りに走ってはいけない。そこまで日本人は貧乏ではない。お客様は欲しかったら、遠くに足を運んでも買おうとする。
そういう商品を我々商売人は考えなければいけないのだ。
「日本で2番目に高い山は?」と聞かれて、すぐに答えられる人は多くない。1番でないと人に覚えてもらえない。まず目指すべきは地域で1番だ。地域で1番になったら地域で1番の売上げができ、全国で1番になったら全国一になれる。
うまい話などない。誠心誠意、商品、お客、価格、サービスの研究をする以外、道はないのだ。
商いで重要なのは「あの人に任せたい」と思ってもらえることだ。たとえば同じメーカーの同じ商品なら、どの店で買っても品質も価格もそう変わるものではない。その場合、購入動機となるのが「どうせ買うならあの人から」という消費者の思いだ。ここを忘れないでほしい。
商店街の小売店が規模を拡大しようと思ってもなかなかできない。その理由の1つに情報不足がある。自店以外の売れ筋、ニーズといった情報が入らないのだ。そこで重要になるのが卸の存在だ。卸は多くの小売店を相手にしているので横串で情報が入る。それを活かすのだ。
「中抜き」といわれながら、卸がしぶとく生き残っている理由もそこにある。
インターネットの時代でも、小売店がなくなることはない。「商品を比較検討して買う」というプロセスを消費者は望んでいるからだ。その過程が買物の醍醐味でもある。そのため、売れ筋だけ並べるのではなく、比較検討してもらう品揃えが必要だ。
外から小売店と卸をみて不思議に思うのは、人事交流の少なさだ。製造業では現場と営業をあえて配置転換し、両方の仕事を覚えさせることで提案能力に優れた人材を育成している。小売店は卸を体験し、卸も小売に進出することで、現状の打開策のヒントがみえてくるのではと考えている。
小売店の方々と接して感じるのは、もっと仕事を楽しんでほしい、ということだ。海外旅行に行きたければ行けばいい。自分にとっての楽しみを追求するとそれが活力になり、結果的に日々の商いにもよい影響が出ると思うからだ。
全国商店街支援センターは、地域社会に貢献する商店街を支援する組織で、2009年4月に設立された。きっかけは、その年の8月に施行された「地域商店街活性化法」だ。
これまで商店街支援といえば街路灯などのハードが中心だったが、今回の法律は地域コミュニティの活性化など、ソフト事業の支援が中心となっている。法律は7つの柱があり、当センターは特に人材育成に力を入れていく。強力なエンジンをもつために、中小企業関係4団体の協力・出資により、あえて株式会社で設立された。
当センターが目指しているのは、「未来志向型商店街」である。それは、商品を供給する地域商業の担い手と、地域の幸福力をつくる地域コミュニティの担い手としての商店街である。
その実現のためには「知」「地」「血」が必要だと考えている。
「知」は、店の目の前を通るお客様のニーズの把握、計画など、情報の分析力や企画力であり、「地」は地域伝統や文化などの地域資源の活用。「血」は次世代の担い手づくり、すなわち後継者づくりである。こうした観点から、個店経営研修をはじめ、商店街活動、提案公募型、テーマ別などの研修を設けている。さらに総合支援として、地域商店街活性化法の認定を目指した計画づくりをサポートしている。
昔、理髪店を営む父に、仕事について聞いたことがある。父はこう言った。「理髪店はカットも大事だが、1番大事なのはお店で過ごす45分の時間だ。お客様がくつろげた、リラックスできたという目に見えない快適さを提供し、また来たいとリピーターになってもらえること、それが商いなんだ」と。商いの原点はそうした部分にあるのではないだろうか。
商店街はお客様に合った品揃えはもちろん、最終的に目指すべきは地域の価値を創造すること、すなわち、その地域ならではの時間と空間をつくることだと思う。一生そこで住むことができ、誇りと愛着をもてる、そんな地域づくりに貢献したいと考えている。







