篠山市「ササヤマルシェ2010」出店を経て開業
平成22年度新たな商店主育成プログラム事業
厳しい経済情勢の中、地域の活性化を促す方法のひとつとして、街の持つ歴史や価値を 今一度見直し、発信する取り組みが全国商店街支援センターによって行われました。
“ササヤマルシェ2010”が街に若い観光客を呼び寄せる
今回、「平成22年度新たな商店主育成プログラム事業」を受託したのは、兵庫県篠山(ささやま)市の一般社団法人ノオト(以下「ノオト」)です。篠山市は、17世紀に築城された篠山城を中心として、武家屋敷群、妻入り商家群で構成される城下町で、その町割りが現在も継承されています。しかし近年、幹線道路沿いの大型店にも買い物客が流出し、ここ5年間で中心商店街の店舗数は約350軒から約300軒に減少してしまいました。篠山市を拠点に歴史文化施設の管理運営や集落の再生などを行っているノオトは、そのような現状を踏まえ、古民家を活用した空き店舗再生によって町並みの保存と新たな商店主の創出を実践しました。
ノオトは、継続的に開業する可能性のある人材発掘を含めたイベントとして、2010年10月にものづくり市“ササヤマルシェ2010”を開催し、17組が新たな商店主候補として出店しました。“ササヤマルシェ”の舞台となったのは、国の重要伝統的建造物群保存地区に指定されている河原町妻入商家群と、御徒士町武家屋敷群周辺です。住居の一部や軒先を店舗として利用するササヤマルシェは地元住民の理解が必要ですが、ノオトの企画課課長の谷垣友里さんは、「会場となった河原町商店会の皆さんは、家を開放し、一般の方に見てもらいつつイベントに協力することに対して好意的でした」。また、町の活性化を願っている河原町商店会の会長は「思い切ってやりなさい」と背中を押してくれたそうです。
ササヤマルシェは10月の土日、祝日の計9日間の期間中、京阪神地域を中心に約1万人が来街し、普段の10倍以上の人出で賑わいました。20~30代のカップルが多く、それまで篠山を知らなかった若い世代に街の魅力をアピールする絶好の機会となりました。

“ササヤマルシェ”を経て、新たな商店主が誕生
開業へのテスト期間ともいえる“ササヤマルシェ”への出店を経て、「岩茶房 丹波ことり」、「ナチュラルバックヤード」が開業しました。
●「岩茶房 丹波ことり」
柴田咲美さんは自然に囲まれた古民家で中国茶や菓子や点心の店「岩茶房 丹波ことり」を開業しました。地元住民にはコミュニティの場として、観光客には日常を離れたくつろぎの空間として利用されています。「篠山を1日楽しんでいただくために、店同士が横のつながりで紹介し合ってお客さまに情報提供をしています。お客さまにはゆっくり落ち着いていただける環境ではないかと思います」と柴田さん。谷垣さんは、「柴田さんは、歴史ある建物の特性を理解してピカピカの新しさにせずに、古民家の風合いを現代の生活になじませるような趣で再生してくださった。商店街から離れていますが、わざわざ行きたくなるほどのおいしいお茶やお菓子の魅力もあります」と太鼓判を押します。
柴田さんは「新たな商店主育成プログラム事業」を通じて情報発信や商品研究等を補って頂いたことで、集客や商品開発に役立ち、広範囲に向けて発信する基礎になったと話しています。

●「ナチュラルバックヤード」
手作りの木工雑貨や天然木のおもちゃを販売する「ナチュラルバックヤード」を経営する足立伸也さん、留美子さん夫妻は、“ササヤマルシェ”での予想以上の集客に自信を持ち、開業を決意しました。「大家さんの好意で店舗の裏にあるガレージを工房として使えることになり、お客さまとの対話ができるので、フルオーダー家具の注文も入るようになりました」と留美子さん。足立夫妻は、社会福祉協議会の子育て支援のイベントに木のおもちゃの無料貸し出しを行うなどの地域貢献にも努めています。店内の一角は子どもたちが遊べるスペースになっており、ママ仲間の憩いの場としてコミュニティが生まれつつあります。
今後は店舗2階での工作ワークショップも予定しているそうです。
足立さんは11月のオープン当初、客数が伸びずに苦しみましたが、ササヤマルシェの来店者がリピーターとなって口コミでオーダーが増えたことに、「新たな商店主育成プログラム事業を通じたササヤマルシェのおかげです」と話しています。

新たな商店主育成プログラム事業によって地元と商店主とのパイプ役となったノオトの谷垣さんによると、「この度の事業はササヤマルシェでの商店主育成と、実際の開業支援の2段階の流れで実施しました。大阪・京都・神戸から90分圏内という地の利を生かして、わざわざ来ていただけるような本物志向のお店の情報発信を考え、商店主候補を募りました。篠山は生活感もある上質な観光地ですので、地域との出会いや、商店会の体制や既存店に新しい風を吹かせてくれる方に出店していただき、バランス良く取り組めたと思っています」。
空き店舗は改修費がかさみ、予算面での調整で厳しい点もありますが、新たな2店舗の出店は、地域コミュニティの担い手として貢献できる人材の発掘であり、古民家に新しい価値を見出す若い世代への発信力にもなっています。


