“地域コミュニティの核となる担い手”を育成する初の試み
高槻市街地の商店街と市民をつなぎ、活性化の推進力となる「現地マネージャー」を!
厳しい経営環境や後継者問題など、さまざまな難問を抱えながら活性化のために努力を続ける商店街。せっかく事業プランやイベント、販促のアイデアを考え出しても、それを具体化し実践していく推進力がなければ、絵に描いた餅に終わってしまいます。
商店街や地域住民の願いをカタチにしてまとめあげ、真に求められる商店街モデルを描きながら、継続的にまちづくりを推進していく力ある人材が全国各地で求められています。「現地マネージャー育成事業」は、地域ごとのニーズに対応し課題を解決できる、実践ノウハウを身に付けたマネージャー人材、しかも、地域コミュニティの担い手として現地に根付く人材の育成を目的としています。
今回、「現地マネージャーをぜひわが街で育てたい!」と名乗りを上げた大阪府高槻市は、大阪と京都の二大都市の中間に位置する北摂のベッドタウン。大型商業施設が5店舗も出店するなど都市化が進む中、6つの商店街・市場が共存し、にぎわいを見せています。現在、同市ではJR高槻駅と阪急高槻市駅を中心とする地域をまちの中心核として位置づけ、「高槻市中心市街地活性化基本計画」を策定。平成21年12月には国の認定も受けています。
基本計画は、今後5年間で「高槻ならでは」の独自の魅力を創出し、中心市街地内の回遊性を高めることで歩行者数をアップさせ、商業の質を向上させていこうというもの。行政はもとより、地元商店街や市民が一体となって取り組むことが不可欠です。
計画を進める市の都市産業部では、「基本計画を基にまちづくりが動き出し、イベントなどのソフト事業もあちこちで芽生えていますが、それを支援する人材の確保が急務だと思っていました。まちづくりへのいろいろなアイデアに対して、考え方をきちんと説明でき、情報を吸い上げ、うまく連携させてことができる、まとめ役が必要です。フットワークとネットワークを兼ね備えた現地マネージャーが、高槻にぜひほしい!」と期待感も十分。
こうした熱い要望を受け、マネージャー候補として選ばれたのが、廣口靖さん(29)でした。

人生初体験! 配った名刺は400枚を超えた!
廣口さんは、大学在学中から高槻の名物イベント「高槻JAZZ STREET」にボランティアスタッフとして関わってきました。大学の学園祭の統括やイベントの企画・マネージメントが好きで、コンピューターのSEとして働くようになってからも、ボランティア活動を続けてきました。そんな廣口さんが、2010年9月に周囲からの推薦で現地マネージャー候補に推されたのです。「もともとマネージメントには自信があったので、きちんと研修を受けてノウハウを学び、まちづくりの役に立てればいいなと思ったのが一番。それからSEの仕事をやりながら、自分の中に飲食店経営への興味がわいていたので、現地マネージャーとして大勢の商店主のみなさんと知り合いになって、商店街で商売をするということや商店主目線でのまちづくりについて勉強させてもらいたいという思いも決め手になりました」と廣口さん。
さっそく育成研修が始まりました。指導に当たるのは、まちづくりや商店街の活性化、起業家育成に実績がある、「有限会社協働研究所」(大阪市淀川区)。廣口さんを担当した同社の東朋治さんは、「高槻の市民力というのはスゴイ。ボランティア参加率が高いんです。何かやりたいという人が多い。特にシニア層ですね。しかし、より軽快なフットワークで地域の調整をしていくためには、やはり若い力が必要になってくる。それぞれのイベントは面白く魅力的なのですが、より連動性を高めた方がよいと思われます。そこにつなぎ役として現地マネージャーが存在して、動きを集約してシステム化できれば、今の一つ一つの努力や成果をもっとまちづくりに生かせるはず」と指摘します。
育成研修では、他エリアのマネージャー候補生たちとの合同研修での意見交換や先進事例の視察、実際の手法の個別実習が半年間にわたって繰り返し行われました。高槻では、ちょうど10月に「食の文化祭」をひかえていたことから、廣口さんは事務局員として営業や資金回収、パンフレット作成の手伝いなどにあたり、無事収益も上げることができました。次いで同じく事務局に参加した「アートdeわくわくストリート」では、芸術イベントの難しさに直面しながらもアートを通じたまちづくりの可能性も実感することができました。また、12月には「高槻芥川宿手作り市」「高槻ブランドフォーラム」にも参加、年明け1月には「たかつきスクールJAZZコンテスト」の企画運営も。「とにかくいろんな人に会って、話を聞いて回りました。配った名刺が400枚を超えたのも人生初体験です」と廣口さん。まちの人たちにも、その存在を認識してもらえるようになり、「こんなイベントをやりたいんだが、話をつなげてもらえないか」といった相談も寄せられるようになりました。「せっかくまちづくりに関わったのだから、もう少しスキルを磨いて、どれとどれを結べばうまく成功するのか、明確にアドバイスできるようになりたい。いかにより多くの収益を生み出していくかが今後の一番の課題」といいます。
現地マネージャーに対する期待の声を紹介
協働研究所 東朋治さん
「まちの人たちが企画したものを後押しするのが現地マネージャー。
あくまでも黒子に徹しながら、地域に飛び込んで、調整したり、根回しできる人でなければなりません。素晴らしい補助金の制度があっても使いこなす現地の人がいなければ意味がないでしょう。高槻には廣口さんのような地域全体の事務局の存在が必要です。今まで1ボランティアだったのが、中心的存在へと成長してきていると感じています」
たかつき中通り本通り商店街振興会会長 中川修一さん
「高槻は大阪・京都に近いという利便性と自然や水辺などの観光資源もあって、人々にある意味選ばれる街だと思います。しかし、有益な情報やまちの魅力が浸透していないのも事実。これまで廣口さんは、よく研究してくれているなあと感心してみていましたが、まちの歴史やバックグラウンドまでも理解していくと、本当のまちづくりに生かせると思うんです。廣口さんには、いろんなイベントに関わりながら、地元の人たちが気づかないような高槻の魅力を掘り起こしていってもらいたい。そして市民の側に立ったまちづくりを進めていってほしいと願っています」
芥川通り商店街 「マウンテン」店主・西田竜一さん
「雑貨などの手作り作品を展示・販売する芥川宿手作り市を開催していますが、アート関連のイベント経験のある廣口さんが、手伝いを申し出てくれたことで広がりが出た気がします。商店街の活性化には個店が元気になることが大事です。そのためには情報を共有したり、他店といい意味で競合していくことも必要なはずなのに、そういう発想自体が商店街にないのが現実で、第三者の立場で客観的に言ってもらえるひとことがいい刺激になります。手作り市のノウハウも要望があればいくらでも提供しますので、廣口さんにはマネージメントをしてもらい、ぜひ波動を起こしていってほしいですね」

