宮古の商店街はいま 東日本大震災商業復興支援マネージャー便り(第3回)
復興支援マネージャー6月報告
宮古市における東日本大震災からの復興と取り組み
岩手県宮古市。人口約6万人の町は、この度の東日本大震災の津波により多くの建物が崩壊・損傷するなど壊滅的な状態となり、市内中心部の商店街も大きな影響を受けました。東日本大震災の被災地の一つである岩手県宮古市が早急に商業集積機能を回復させ、新たな商業復興デザインを構築し、地域のコミュニティ規模に合致した商業地域を目指していくため、全国商店街支援センターでは、震災、水害等の大規模自然災害における商業復興に携わった専門家を「商業復興支援マネージャー」として宮古市に派遣することを決定し、現在「商業復興支援マネージャー」が宮古市の商店街復興にむけて、熱い想いで事業に取り組んでいます。
【 テーマ1: 宮古市中心商店街等の商業者の姿勢 】
今回、6月26〜28日に津波により甚大な被害を受けた中央通商店街の組合員の方を中心に、今後の再建に向けた展望をヒアリングしました。しかし、未だ宮古市の復興に向けた方針や方向性が見えない状況のなかで、今後の商店街の復興に向けた対応策や自店再建の道が描けない状況にあります。
小売業は人口の定着や人の交流に付随して発展する産業であり、その都市やまちの今後の方向が見えないなかでは、復興どころか復旧に向けてさえも、どのように組合員が協議し進めていけばいいのか難しい面があります。
しかし、宮古市の中心商店街の商業者の皆さんは、総じて商業者としての意識が高く、神戸から訪れた私たちを驚かせました。
宮古市の中心商店街は、宮古駅から市役所まで中央通商店街と末広町商店街が東西の軸を形成し、駅前には旧マイカルが運営していた商業施設「キャトル」と、生鮮食品関係の地元商業者たちで構成する「魚菜市場」があります。
平成14年にマイカルが経営破綻し「キャトル」が閉鎖されたとき、商店街にとっては近接する競合施設になりますが、その閉鎖が宮古市の中心商業地の集客機能を低下させると判断し、地元商業者たちが出資し管理運営会社(㈱キャトル宮古)を設立し、宮古市の支援を得て再建されたという経緯があります。
他の地方都市におけるマイカル破綻の対応では、どこも宮古市の商業者のような広い視野に立った対応は見られなかったようです。
また、「魚菜市場」も30名程の組合員が、平成5年に共同化事業として鮮魚店中心に生鮮食品店が集積する共同店舗を建設しています。阪神淡路大震災のとき神戸の多くの小売市場が、業態転換しセルフ方式の共同店舗として復興を果していますが、それ以前に対面販売形式の同じような仕組みで、高度化資金を活用して商業施設を建設しています。
このように宮古市の中心商業地の商業者たちは、自店の経営に対する努力と共に、宮古市の中心商業地のあり方を真剣に考え、ライバル同士が手を組み商業地としての中心性を維持していこうと努力してきたという経緯があります。
今回のヒアリングでは、宮古市の商業者の意識の高さに、きっと今回の被災から復興できるという確信を持つことができました。

【 テーマ2:地方都市商業の再生の方向性 】
商店街の活性化(再生)は、その商店街に消費者が魅力を感じることが前提となりますが、その魅力を創造する方法には二つあります。
一つは大都市の都心商業地のように店舗の集積から生まれる競争によって創造される魅力です。商業地内の店舗間の競争がそれぞれの店の個性化を促進し、個性的な店舗の集積が商業地に魅力を生み出すわけです。
もう一つは、宮古市のような地方都市のように店舗数も少なく競争原理が余り機能しない場合です。この場合は、商業地や商店街を構成する商業者たちが、競争に代えて消費者のニーズやライフスタイルに適合するように計画的な魅力づくりをする方法です。つまり 共同化によって生み出される魅力です。
商業地や商店街の活性化(再生)は、競争か共同によって導かれるのです。
宮古市の中心商店街の復興に向けた選択は、被災の状況や商業者の年齢的な問題から推測するとき、店舗集積の低下が予想されます。そのため競争による魅力創造よりも、商業地をあげて市民が来街しやすい魅力を計画的に構築していく方策を重要視していく必要があります。
そのためには、宮古市の中心商業地は、これまでの商店街等の帰属組織にこだわるだけではなく、消費者や生活者の視点に立って、いかに魅力的な商業機能を構成し中心性(顧客吸引力)を高めていくのか、復興に向けて考えていくべきだと思います。
宮古市の中心商業地の商業者の皆さんには、その姿勢で取り組んできた経験もあり、少し時間が掛かるかも知れませんが、復興が成し遂げられると信じています。
●東日本大震災商業復興支援マネージャーの紹介
中多英二氏(中多商業企画研究所所長)
略歴:今年3月神戸市役所を退職。25年間神戸市産業振興財団において商店街等の支援事業に従事。財団在職中に阪神淡路大震災があり、神戸市内の商店街、小売市場の復旧、復興支援に従事。平成23年4月中多商業企画研究所設立。現在、東日本大震災商業復興チーフマネージャーとして活動中。著書に「商店街の情報化戦略」「中小企業経営の構図」「小売市場の復興戦略」等
東充氏(神戸長田コンベンション協議会事務局長)
略歴: 阪神淡路大震災により家屋、店舗とも焼失。仮設店舗「パラール(100店舗)」を立ち上げ、5年間にわたり管理運営を行う。その後、神戸長田コンベンション協議会を設立し、全国からの修学旅行生を対象とした体験学習の窓口、並びに震災で消滅した多くの歴史的資料や写真類の収集・整理・保存の業務を行っているほか、現在、東日本大震災商業復興チーフマネージャーとして活動中。
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