宮古市の商店街はいま -東日本大震災商業復興支援マネージャー便り(第1回)-

 岩手県宮古市。人口約6万人の町は、この度の東日本大震災の津波により多くの建物が崩壊・損傷するなど壊滅的な状態となり、市内中心部の商店街も大きな影響を受けました。東日本大震災の被災地の一つである岩手県宮古市が早急に商業集積機能を回復させ、新たな商業復興デザインを構築し、地域のコミュニティ規模に合致した商業地域を目指していくため、全国商店街支援センターでは、震災、水害等の大規模自然災害における商業復興に携わった専門家を「商業復興支援マネージャー」として宮古市に派遣することを決定し、現在、「商業復興支援マネージャー」が宮古市内中心市街地の商店街復興にむけて、熱い想いで事業に取り組んでいます。


【宮古市中心市街地商店街の現状】

宮古市内に商店街は任意団体を含め約20団体ありますが、振興組合を設立しているのは「宮古市中央通商店街」と「宮古市末広町商店街」の2団体のみです。 
末広町商店街は、すべての組合員の店舗が浸水被害を受けました。電気のない暗闇の中、商店主の方々は懸命にヘドロをかき出してきました。3月下旬に電気が復旧し、店舗再開に向けた準備が本格化。4月下旬には8割近い店舗が営業を再開しました。 
ある衣料品屋さんは、大津波の翌日にシャッターを開けて店内の商品を屋外に搬出。きれいに水洗いした商品を元気いっぱいに激安で販売を始めました。すると、お客様が殺到したそうです。いち早く営業を再開したその姿に、大勢の商業者が勇気づけられたといいます。 
一方、より海側の中央通商店街では被害が甚大で、とても営業を再開できる状態ではありませんでした。半数近くが解体となり、営業再開にこぎつけることができたのは全体の1割程度でした。

宮古市中心市街地商店街の現状

振興組合の解散も検討されたのですが、私の着任後にスタートした「朝会議」に徐々に商店主が集まるようになり、宮古市役所のバックアップを得て、振興組合が存続に向けて動き出しました。 
中央通商店街では、毎週3回(月・水・金)に組合事務所で「朝会議」を続けています。最初は「愚痴を言い合う会」としてスタートしたのですが、今は商店街の将来に向けた活発な話し合いが続けられています。 
中央通に触発されたのか、末広町でも毎週3回朝会議が始まりました。55歳以下(!?)の「若手の会」、56歳以上の「オヤジの会」、パワーあふれるおかみさん会改め「おねえさんの会」の3つ。こちらは朝8時から始まります。

 

【被災商店街を悩ませる問題】

被災商店街を悩ませる問題は山ほどありますが、その中で2つをご紹介します。 
一つ目は、善意の支援物資です。今、被災地では支援物資が大量に余っており、その余剰在庫が避難所以外でも配られています。生鮮食料品はともかく、衣類、文具、日持ちする加工食品を取り扱う店舗は大打撃を受けています。支援物資を被災商店街で購入することは、被災商業地の自立復興を後押しできると思われます。 
もう一つは、浸水地域における新築の自粛です。解体を余儀なくされる店舗は、解体後に仮設店舗や本設店舗を新築することに「自粛」を要請されています。浸水地域における新築基準が明確になる時期が確定しないため、復興ビジョンを思い描くことが困難な状態です。やむを得ない事情とはいえ、解体を急いで後悔している店舗も多いと聞きます。

 

【復興へのキックオフ】

大津波から3カ月を迎える6月11日から2日間、三陸海岸沿いの被災商店街に先駆け、両商店街を中心に「宮古あきんど復興市」が開催されます。 
当初は被害がまだ軽微といえた末広町商店街単独イベントでしたが、復興に向けて中央通商店街も参画し、両商店街が手を携えて開催される運びとなりました。「復興」という言葉を使うことに異論もあったのですが、「復興を目指すキックオフイベント」と捉え、前向きに進んでいこうという意見で一致し、名称が決まりました。 
復興市がきっかけとなり、商店街全体の復興ビジョンを検討、策定する場づくりが進みそうです。 
従来のイベントと異なり、営業再開がままならない中でのイベント準備なので、とにかく大変ですが、商店主のみなさんは懸命に準備を進められています。当日のスタッフも全く足りない状態です。 
6月11日と12日は、ぜひ宮古にお越しください!商店主たちの元気と笑顔が、最大のおもてなしです。



【商業復興支援マネージャーの業務と一日】

5月13日に宮古入りし、間もなく3週間になります。着任後、様々なことがありました。
浸水被害を受け、仮営業中の商店街にあるビジネスホテルに滞在し、商店街事務所内に拠点を構え、様々な業務に従事しています。 
6つの朝会議の進行に加え、イベント実行委員会やその他の会議にも参加します。市や県の担当者の方々との各種調整や打合せ、商店主へのヒアリング、被害状況や営業再開状況の調査、様々な助成制度の活用相談やアドバイス、今後の将来まで相談が寄せられます。特に今は、間もなく開催される「宮古あきんど復興市」準備のお手伝いもあるので、多忙を極めています。事務所に座っていると、ひっきりなしに来客が訪れます。商店街を歩いていると、呼び止めていただき、様々なお話をお聞きします。 
すべてに業務に共通することですが、被災商店主たちの切実な悩みや不安、要望をじっくりと聞くことが最も大切です。心の葛藤を吐き出した後には、前向きな希望が生まれるのです。

私の平均的な一日の様子をご紹介します。

8時からの朝会議に備え、7時半過ぎに事務所で準備。8時からの朝会議が終了すると、今度はメンバーを変えて9時から別の朝会議が始まります。 
10時からは事務所に座り、メールをチェック。程なくして、様々な打合せ予定がブッキングされていきます。商店主の方々と打合せやヒアリング、個別相談が多い時間帯でもあります。 
午後からは、行政関係との打合せ、来客対応、イベントの準備をはじめ事務所や商店街を行ったり来たり。あっという間に夕方です。 
夜は会議の日もあれば、ビールを呑みながら事務所や居酒屋で商店主たちと将来の復興ビジョンをはじめ、雑談を交えてワイワイと陽気に交流しています。
会議会合や交流会がない夜は(ほとんどありませんが)、レポートや資料づくりに励みます。夜遅く帰ると、そのまま爆睡。夜中に目覚めることはありません。 
非常に多忙かもしれませんが、充実した毎日です。街路灯や信号も徐々に復旧してきました。営業を再開する店舗、または新規出店も増えています。
日々、復興に向けて前進していることが、肌身に感じることができます。(執筆:東朋治氏)

商業復興支援マネージャーの業務と一日

 

●東日本大震災商業復興支援マネージャー派遣事業 統括マネージャー

東朋治氏(有限会社協働研究所 取締役)

略歴:阪神淡路大震災の激甚地である神戸・新長田地区において、再開発商業ビルの一元管理を担う「新長田まちづくり㈱」の総括マネージャー、及び商業者主導でソフト事業における被災地復興を担う「㈱神戸長田TMO」総括マネージャー、中心市街地活性化基本法に基づく「神戸・新長田終身市街地活性化協議会」の事務局長を平成22年3月まで兼務。平成23年5月より東日本大震災商業復興支援マネージャー派遣事業の統括マネージャーとして、宮古市に駐在。関係者の心の拠り所となり、復興支援事業に取り組んでいる。


【関連情報】

平成23年度 東日本大震災商業復興支援マネージャー派遣事業(岩手県宮古市)

商店街復興へ「朝会議」 宮古・中央通振興組合(47NEWS)

 

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