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全国各地の商店街活性化の事例から、「商店街活性化のヒント」になるノウハウをご紹介します! 商店街支援ノウハウ

Profile

専修大学
大学院商学研究科 教授

渡辺達朗さん

横浜国立大学大学院修士課程修了。新潟大学、流通経済大学を経て現職。専門は流通論・流通政策論。中小企業政策審議会商業部会委員の他、国や自治体の委員も歴任



急変する市場の中で商店街の本気が試される

 ——商店街を取り囲む市場の変化をどう思われますか?

近年、ECサイトも多様化し、消費者の嗜好に対応したサービスも充実してきています。食品でさえ、注文即配達といったサービスが登場し、大手チェーンストアも、サービスや商品の試行錯誤を重ねています。このように市場が大きく変化し、流れはさらに加速しているので、商店街は明確な策を打たないと、あっという間に淘汰される可能性が大きいと言えるでしょう。


——商店街が厳しい競争を勝ち残るポイントは何ですか?


その鍵はこれまでも言われてきたとおり「コミュニティ」にあるのではないでしょうか。高齢化・人口減少が進むなか、とくに東日本大震災以降、子育て環境や高齢者介護など、各地域の課題が深刻化し、それらを地域をあげて解決することがいっそう求められるようになっているからです。

これまでも、コミュニティの担い手として商店街がどのような役割を果たせるのか、語られることがありましたが、より本気度をもって具体的な課題に取り組むべき時期が来ていると言えるでしょう。


他の団体を巻き込み連携してコミュニティの課題解決

 ——コミュニティづくりは何から始めればいいのでしょう?

地域により課題は異なるため、絶対に正解と言える策はありません。重要なのは「模索し続ける」ことです。商店街だけでは限られたことしかできませんが、他の団体との連携に辿り着くこともあるでしょう。とくにNPOや地域サークルといった高い志をもって活動している人たちや、共通の趣味や関心でつながっている人たちと積極的に交流することで、できることが見えてくるはずです。大学との交流もこの中に含まれます。最近は地域に目を向け、自分たちの生活圏にあるまちの問題について積極的にかかわろうとする学生が増えてきました。10年ぐらい前には、そうした学生はどちらかというと少数派でした。彼らを巻き込むことから始めるのも打ち手のひとつです。


——連携相手はどのようにして見つければいいでしょうか?

商店街の側から積極的に相手にかかわることが必要です。例えば大学との連携を考えるならば、まずはそうした学生が所属する大学のゼミを探し出し、積極的にアプローチすることが大切になるでしょう。ただし、学生に限らず連携する以上は、お互いに利益をもたらす関係をつくらないといけません。最初から完璧な関係を求めずに、トライ&エラーで色々な団体と付き合っていくしかないです。


——連携を成功させるためのポイントとは?

他団体との円滑なコミュニケーションを実現させるためには、全体を俯瞰して見ることができる第三者的な立ち位置のコーディネーターを置くこともいいでしょう。国や自治体でそうした人材を派遣する制度も整備されていますので、選択肢のひとつかもしれません。第三者がいることで共通の目標が見つかってうまくまわるようになります。

しかし、外部からのサポートはあくまでも補助的な役割に留め、原則的には自分たちで連携を持続させる策を考えなくてはいけません。実際、コーディネーターが抜けた直後にプロジェクトが空中分解する例もあります。コーディネーターに任せるというよりも、やり方を学ぶことが大事で、そのうえで、自分たちなりのアプローチを考えなくてはいけません。


——連携が失敗しないように気をつけるべきこととは?

民間ビジネスの世界と比べると、商店街のコミュニケーションは独特に感じられることがあります。典型的な例は、外部の人との会議の場で、商店街に長年かかわってきた人にしかわからないような用語を使ってしまうこと。勝手知ったる店主同士の人間関係なら「あうんの呼吸」で通じても、外部の人には通用しません。連携を持続可能で有効なものにするためにも、内輪のコミュニケーションを一度見直すことも重要です。これまで内にこもっていた商店街の役員やご店主ほど、気持ちを切り替える必要があります。



連携を強固にするためには原点に立ち戻ることも大事

——組織の意思統一を図るためには何が大切でしょう?

個店にとっては来店客の数を増やすこと、売上を伸ばすことが一番大事です。しかし、例えばコミュニティの担い手として舵を切ろうとした時、「これをして何のプラスになるのか?」という疑問の声が出ることもあります。組織として意思統一が乱れると、取組み自体が空中分解してしまいかねません。

そこで大事なのは目的を全員が共有すること。それには初期段階での建設的な議論の積み重ねや情報共有が欠かせません。

商店街主体で子育てや高齢者の支援など、コミュニティの課題解決に取り組む場合、それが直接的な売上には結びつかなくても「地域の役に立つことが、将来的に商売につながる」という目的意識を共有します。組織で取り組むべきことが定まれば、短期的な売上に左右されないでしょう。

もちろん、すぐに結果が出るとは限りません。なぜ、いまコミュニティが大事なのか、外部の協力が必要なのか、プロジェクトを進めるうえで、原点となる意思統一の議論は、まず商店街という組織の中でしっかり行うべきだと思います。

 

 

商店街活性化に学生の意欲や強みを活かす

 地域課題への意識の高い学生は成長意欲も高く、前向きな姿勢を持っていると渡辺教授は言う。

「さまざまな選択肢がある学生生活の中で、地域での活動を選ぶ学生は自分を高め社会に出ていく成長意欲を持っています。そうした向上心を活かす場として、商店街の活性化に参加することはうってつけのテーマといえます」

とはいえ、同じ学生が活動に参加できるのは実質、ゼミに入ってから就職活動が始まるまでの限られた期間。渡辺教授のゼミでも次の学年へと受継ぎながら商店街と活動するのだとか。毎年のように顔ぶれが替わる大学との連携だが、それでも商店街にとって価値があるという。とくに商売以外のトレンドやアイデアを取り入れる点で、大学との連携は有効だ。

「学生なりに『この街にはこういう特徴があって、私たちはこういうことをやりたいんだ』と課題解決に向けた施策をプレゼンするなかで、店主たちが思いつかないような優れたアイデアが誕生することもあります。さらに、日常的にネットやSNSに触れている学生たちの方が、お金のかからない情報発信手段をよく知っていますので、頼りになる部分も大きいと思います」

活動を通して自分の力を発揮したいと感じている学生たちとの連携は、思いもよらない副産物が生まれる可能性もある。世代も違えば価値観も違う学生との連携。最初は上手くいかなくても、トライ&エラーで付き合い続けることを大事にしたい。


ゼミでは、神奈川県川崎市の新丸子や向ヶ丘遊園の商店街と連携。
学生たちが活躍している。
 

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