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全国各地の商店街活性化の事例から、「商店街活性化のヒント」になるノウハウをご紹介します! 商店街支援ノウハウ

パネルディスカッション「地域の魅力の活かし方」


コーディネーター:観光地域づくりプラットフォーム推進機構会長 清水愼一

パネリスト(1)みやのかわ商店街振興組合 理事長 小泉貴之

パネリスト(2)神奈川県 産業労働局 観光商業部 商業流通課 商業まちづくりグループ 副主幹 鈴木博明

パネリスト(3)観光まちづくりカウンセラー 今村まゆみ

パネリスト(4)公益社団法人 商連かながわ 主任 古性清乃


清水
 皆さん、こんにちは。商店街をどう活性化していったらいいかというテーマで、いろいろ議論をしてまいりたいと思います。

私はもともとJR東日本とJTBの役員をやっていたのですが、地域をいろいろお手伝いする中で、観光が大きな活性化の手段にはなるだろうと確信しました。観光は単なるプロモーションやプログラムづくりではなく、まちづくりであると。しかも、そのまちは地域の商店街を中心にしたまちづくりだと。これなくして観光はあり得ないという確信を持ちました。世田谷区で、観光はテーマパークやスカイツリーをつくることではなく、まち中観光だということで、まちなか観光協議会というのができましたが、その顧問も務めさせていただいます。
 
先ほど小泉さんと鈴木さんからはいろいろなお話をいただきました。パネルディスカッションでは、新たに今村さん、古性さんのお2人に入っていただきました。自己紹介がてら、今何の活動をしているかをお話しいただきます。まず今村さん、お願いいたします。
 

観光地域づくりプラットフォーム推進機構会長 清水愼一 氏

 
 

今村 私は国内旅行情報誌「じゃらん」の創刊から14年ほど、編集や広告制作を担当してきました。今は、有名観光地ではないところでも非常に面白いところがあるのではないかと考え、これまで培ったノウハウを活かして、観光地としてはあまりメジャーでない地域に対して観光を切り口にアドバイスを行っています。消費者の視点で街の面白さを考え、それを最終的にはメディアにつなげていく仕事をしています。例えば北海道十勝の清水、新潟県五泉市など、あまりメジャーではない場所に足を運ぶことが多いです。東京都では、平成17年から2年半、観光部からのご依頼で派遣アドバイザーとして年間60日ぐらい、青梅・奥多摩エリアに入って、広域連携まちづくりのPRをしました。

青梅は青梅マラソン以外の観光はあまりないのですが、昔映画看を描いていた板絵師の方がいらして、その方が泥絵具を使った昔の映画看板を描きました。その看板を、商店街のリーダー的な存在の方のアイデアで、まちに飾りました。それで、少し有名になった昭和のレトロな雰囲気を持ったまちです。さらにレトロ感をプラスしようと、15台位しかなかった看板を40基位増やすため、近くの美術大学の学生とともに映画看板をつくり、店主さんがどんな映画が好きなのかなどをヒアリングしながら、その店主さんの人柄がわかる映画看板を並べる取組みのお手伝いをしました。


観光まちづくりカウンセラー 今村まゆみ 氏


 

もう1つは奥多摩です。御岳山の頂上に武蔵御岳神社という、紀元前からあるすばらしい神社があります。その神社を、25軒の神主さんたちが守っているのですが、その神主さんのいらっしゃるところが宿坊として宿泊もできる場所となっているんです。これは非常に面白いと思いました。御岳山は、その当時は60代の方がたまに山歩きをしているぐらいで閑散としているエリアでしたが、ここをPRするにあたり、当時女性誌で出始めていた「パワースポット」や「ヒーリング」という言葉を使ってコンセプトを固め、30代、40代前後の女性をターゲットにしました。今でいう「山ガール」の前身の「登山女子」という方たちを集めようとPRをしたんです。そのPRの結果、数年かけて客層が変わり、今ではこのエリアに非常に多くの若い人達が集まるようになりました。

清水 ありがとうございます。それでは古性さん、よろしくお願いいたします。
 

古性 商連かながわの古性と申します。商連かながわは神奈川県の商店街連合会で、700くらいの県内の商店街に加盟していただいています。神奈川県の指導で60年前くらいにできた団体で、公益法人で、商店街の振興をやっております。私は広報担当なので、ホームページや、商店街新聞という広報紙をつくっています。また商店街の事業のお手伝いやご相談に対応したりしています。例えばイベントに使う設備が足りないので、どこかで借りられないかという話を伺い、他の商店街から貸していただけないかとか、安く買えるところを知らないかなど、そういったお話をつなぐのが、メインの仕事です。


公益社団法人 商連かながわ 主任 古性清乃 氏 

 
 

そんな仕事の内容に、最近、商店街観光ツアーというものが加わりました。神奈川県から、県内外から人をひきつけるような商店街をつくっていこう、地域の魅力の掘り起しをすれば、商店街が観光資源になるのではないか、という話が出まして、昨年度、神奈川県の主催で商店街観光ツアーをトライアルで3回開催しました。それを引き継ぐために、今年度、商連かながわが、商店街観光ツアー委員会をつくりました。メンバーは神奈川県、県中小企業団体中央会、県商工会議所連合会、県商工会連合会、JTBです。

神奈川県のトライアルを入れると1年間で12回、商店街観光ツアーをやりました。急ピッチでいろいろなパターンを試しているところです。何も観光資源がないけれども特色のあるお店がいくつかあるような商店街を廻ったり、元町の様な、既に観光地になっているところを廻るツアーを企画しています。

商連かながわと神奈川新聞は連携しており、商店街の連載をしています。今日、そのコーナーで、宿愛甲商工振興会という、厚木と伊勢原市の境目にある愛甲石田という、何もない駅の商店街で、高月堂(こうげつどう)という和菓子屋さんの記事が載っていました。このお店は、社長が1人でたい焼きを焼いている和菓子屋さんです。今時のたい焼きは多分5個ぐらい一緒に焼くと思うのですが、この店は手間を惜しまず、1匹ずつきちんと焼いて、しっぽのところにもあんこが入っています。それを買うために、遠方からも買い物客が訪れると書いてあります。実はこういうお店を商店街ツアーで廻っています。

すごい特色があるものでもないかとは思うのですが、そういったちょっとしたおもしろい、ちょっと買ってみようかなというお店をフィーチャーして、今後も商店街観光ツアーに組み込んでいきたいと思っております。

清水 ありがとうございました。パネリスト4人の方々を分類しますと、小泉さんが商店街の当事者。それから鈴木さんが行政。それから今村さんが消費者代表、それから古性さんが県と商店街をつなぐ商連かながわという立場です。立場が違って、役割も違うのですが、いまのお話を聞いて、基本的に4人のやっていることが同じことだとよくわかります。やはり商店街を皆で大事にしていかなければいけない、商店街は地域のコミュニティあるいは観光を含めた交流の拠点だというところが共通しています。

改めて、この商店街の魅力や価値をちょっとお話しください。ある政令指定市の市長が、商店街はもう要らない、買い物難民は通信販売すれば十分なんだと施政方針演説で語っていました。本当にこの方は地域のことを全くわかっていなと私は思っています。では小泉さん、改めてどうぞ。
 

小泉 大型店は確かに品ぞろえもすばらしいですが、商品を売っている人はプロではないと思うのです。商店街は、1つ1つのお店がもう何十年、長いところは何百年という長い商売をやっていますから、すべてを知り尽くしているプロです。また大型店に行けば何でもそろうかもしれないですが、商店街も何でもそろうのです。昨年にぎわい補助金をいただきましたので、それでみやのかわの商店街をカタログにしました。それを買い物弱者の方からいろいろな事業者に配っています。それは商店街だからできたのです。自分自身のお客さんだけだったら、なかなか広がりませんが、114店舗のお客様にすべてカタログを配布できれば、お客様がふえるわけです。

また、みやのかわ商店街という1つの商店街で法人登記し、秩父市の入札に参加できるようにしました。そうして、先月から始めたのですが、秩父市の大滝荒川地区という、もう病院の診療所が月に1回、2回しか開業しないような地区に住む人たちが普段病院に行く送迎というのを、うちの商店街で始められることになりました。普通ではなかなかできないと思いますが、うちの商店街のメンバーにはタクシー会社がありまして、介護の講習も受けているので、そういった方々も送迎できるのです。1つの商店街が1つの大きな大型店よりももっと専門的な知識があるからこそ、商店街でいろいろな仕事をとりながら各店舗に落とせる。それが商店街の魅力と思っています。

また、魅力があれば、やはりそこに若い人が戻ってきてくれるのだと思います。5年前ぐらいに30代の跡継ぎさんが帰ってきてくれました。それも、大きな商社に勤めていて、海外で活躍していた人が、コミュニティがあるこの秩父が好きだといってご実家のお茶屋さんに戻ってきました。そうしたら、ばたばたと続けて、その年代が帰ってきてくれたので、先ほどお話しした27年続いているナイトバザールの実行委員に後継者ができ、そのイベントの中身が、一時期は停滞期もあったのですが、すごく充実するようになりました。現在、第2の新しいナイトバザールとして続けているなと思っています。うちの商店街にはそういった若い人達を惹きつける魅力がある。だからこそ、帰ってきて事業ができる。そして、どんどん色々なことを膨らませることができると思っています。

清水 ただ、現実に人口6万人ですよね。先ほど2万5000人の方が65歳以上という中で、商売そのものは非常に厳しいと思うのですが。
 
小泉 確かに、ビジネスとしてはまだまだ非常に商店街は厳しいところがあります。正直、私が(理事長に)なってから、お店をやめるという方もいました。商売というのはずっと長年やってくるとそのやり方が非常に固まって、本当に守りに入ります。でも、守りに入るとだめなのですよね。やはりどこかで少しでも進むようにしなければ、ビジネスチャンスも来ないんです。今の商店街のメンバーにはそういったことを、本当に毎日のように、私は周知して、いろいろ教えていく。そして自分も教えられる。そうすると自分の将来も広がると思います。ここ数年、うちの商店街の全体的なその売り上げは、実際上がっていると思います。元気になってきていると思います。シャッター商店街とは言われていません。今現在空き店舗ゼロというふうに、ずっとうたわれているのですが、実は今1軒空いているのですよね。ちょっとそこは家賃が高いもので、なかなか入らないのですが、いつもは、お店が空くと、そこで若い人が開業してくれます。ああ、みやのかわだったらやっていけるだろうというふうに思ってくれているという商店街だと思っています。

清水 本当に元気づけられますね。他の商店街ではもうだめだというところがたくさんあります。そういった意味で、小泉さんの活動は非常に参考になります。鈴木さん、神奈川県は大きなところから小さなところまで商店街もたくさんありますが、改めて商店街の魅力とか価値とかを含めてお話しいただけませんか。
 
鈴木 私は、商店街というよりも、やる気のあるおもしろい商業者がまちに残ってくれたらいいと思います。地域社会がサラリーマンと公務員だけでは面白くない。そこに多少はちゃめちゃな商業者の人がいたら、まちが豊かになるのではないと思います。大和で若い人たちと、地域の名産をつくる取組みをしました。大和で当時まだ乳牛を飼っている、75歳の、牛を愛するおじいさんがいて、その人の牛の牛乳でプリンをつくりました。商売人だけではなく、1次産業の人たちも含めて、そのまちの豊かさにつながると思います。

商店街へ行くとおじいさんばかりです。海老名市の国分寺台中央商店街はどんどん空き店舗がふえて、後継者がいませんでした。そこで朝市を提案しました。75歳のお豆腐屋さんは朝市を始めてからやる気が出て、朝市に亡き奥さんのおからコロッケを復活させました。それが年に1回の市の産業フェスティバルで名物になり、その年から新しい商品開発も始めるようになりました。明日店をやめようかと言っていた人なのですけれど、やる気が出たんですね。国分寺台中央商店街は、今まではさびれてスポットライトの当たることのない商店街だったのですが、海老名市の商工会議所に「あの朝市で有名な国分寺台商店街」と紹介されるようになりました。それを見て、ああ、よかったと思いました。お豆腐屋さんは、その後ご病気で亡くなられてしまいましたが、その人の最後の2年間をお手伝いできて、その2年間が輝いたものになって、良かったと感じています。

そんな商店主の人たちが生き生きと輝いている様子を、子どもたちが見てくれて、あのお父さん、1人なのに楽しそうに豆腐屋やっているな、倒れる寸前まで楽しそうに朝市やっていたよね、ああ、こういう生き方もあるのかな、などと思ってくれるといい。自分が思った生き方を全うしようと思えば、それは死ぬ寸前までできる。今の子供たちは、いい大学を出て、いい会社に入ったって、一生勤められるかどうかわかりません。だから、努力しても無駄だと、フリーターやニートになる子ども達も増えています。そんな子供たちにとって、あまり儲からないかもしれないけれど、何か楽しそうに生きている商店のおやじさんたちが身近にいるというのは、いいのではないか。そんなにうまくはいかないかもしれませんが、もしかしたら、それが1つの後継者対策の可能性にもつながるのではないかと思います。

清水 今村さん、消費者として、あるいはまちづくりのカウンセラーとして商店街の魅力、価値はどこでしょう。
 
今村 商店街の魅力、価値というのは大きく2つあると思っています。1つは観光に求められる要素の「食べる」「見る」「買う」「知る」「体験する」「ふれ合う」「つぶやく」がそろっているかどうかです。特に最近は、20代から30代の人たちはつぶやくネタ探しに旅先を選ぶと言われているぐらい、つぶやきたい。他で体験できないことや他では知り得ないことをつぶやきたいのです。商店街を歩いているうちにこの要素を全部網羅することができます。じゃらんリサーチセンターの調べで、宿泊を伴う観光客の目的の1位は昔は「温泉」でした。今はその地域ならではの「食」が1位、そして「温泉」「宿」「名所旧跡」と続き、5位が「まち歩き」です。この「まち歩き」を目的に挙げる人の数は、年々増加しています。商店街が発達した場所というのは、近くに名所旧跡が近くにあることが結構多く、多くの商店街は「名所旧跡」の要素も網羅しています。そこが商店街の強みだと思います。最近の消費者は、メイン通りだけでなく、ちょっと裏道を入った、生活臭のするような路地を歩くという傾向もあって、そういうまち歩きができる商店街も魅力的と思われます。
 
もう1つは、大型店にない魅力です。私は世田谷の松陰神社商店街の近くに住んでいるのですが、顔なじみになってくると、店主が正札とは関係なく、かなりおまけをしてくれます。また大型店にはないすき間の品ぞろえがあります。例えば急須。百貨店だと値段が高すぎるけれども、スーパーだと質が悪すぎる。これらが、田舎の商店街のお茶屋さんには、値段と質のバランスがいい急須が、結構あるのですね。洋服も同様です。60~70代の人たちは、ネットではものは買いません。でも、百貨店に行くと、久しぶりの同窓会に行くような服しか売っていない。近くのコンビニに行くような手ごろな値段で、しかもそんなに格好の悪くない服が欲しいのに、それがないのです。でもスーパーに行くと安物しかない、ユニクロだと柄がなくて寂しい。そのニーズに合う服が、実は商店街にはあるんです。田舎の商店街での売れ筋は、日本製の3000円~5000円ぐらいのブラウスだそうです。この部分が商店街の価値だと思います。

また、商店街にはプロがいます。例えばお茶屋さん。ただ袋詰めにしているだけでなく、お茶を何種類かブレンドして、自分がおいしいと思うお茶を出している。そういうことも商店主さんが教えてくれる。大型店ではものを買うときに知識が増えたりしませんが、商店街ではものを買うときに知識も増えて、しかもおまけもしてもらえます。これもやはり商店街の価値だと、消費者の視点から思います。

清水 ありがとうございます。だんだん商店街の価値が見えてきたなと思います。それでは古性さん、いかがですか。
 
古性 今村さんのお話しにもありましたが、商店街というのは歩いていくとお城があったり寺があったり、自然発生的にお店が集まっているので、その商店街自体の地域に魅力があって、観光に向いているということがあります。私どもが商店街観光ツアーをやる中で似たような話があります。7月に相模原の淵野辺で商店街ツアーをやりました。淵野辺には、はやぶさが帰還したときにそのカプセルを開けたJAXA(宇宙航空研究開発機構)があります。我々が商店街とJAXAに行くツアーを提案すると、商店街の役員の方が、JAXAにすぐ話を取り付けてきてくださり、当日もJAXAの教授が、地元商店街から紹介されたお客さんが来てくれたのだからということで、丁寧に施設を案内してくださいました。商店街の方というのは、地域で、いろいろな人とすごくいい関係を築いていらっしゃることが多く、ハード面だけでなく、ソフト面でも潜在力があります。商店街で観光ツアーをやる場合に、こういった商店街の人脈の面を活用すると、それがツアーの魅力につながると思います。
 
あと商店街の魅力は商店主のキャラクターです。商店主が、「あなた結婚をしてるの?」とか、そういうことを聞きながら、家族の2人で食べるものを見繕ってくださったり、割引して売ってくれたりします。そういうことは大型店の店員がやったりしません。私はお店で店主さんと交流するのがすごく楽しいです。これも、魅力の1つだと思います。

清水 先ほど鈴木さんから、商店街あるいは商店主は伝わっていない、理解されていない中で、いろいろな工夫をしなければいけないとありました。また、商店街ツアーの話や朝市の話も出ましたが、商店街の小泉さんは、何か補足などありませんか。
 
小泉 やはり、商店街は商店主。皆、魅力があると思います。うちの商店街でも隣の商店街でも、1軒1軒、皆さん楽しそうに商売していますよ。先程の話にも出ましたが、お茶屋さんは、本当にお茶をお茶箱で作っています。お茶の入れ方も、お茶を入れる時のお湯の温度も、専門的なことを教えてくれます。一歩踏み込んだら、二歩、三歩と入って行ける。それが商店街の魅力だと思います。
 
自分自身が商店街を歩いて、観光客に会ったら、道案内で、何でも教えてあげたいと思います。秩父館にいて、お茶を飲んでいるお客さんに、どこがおいしいお店かを紹介してあげます。お客さんに対して、私が魅力を発信していると思います。うちの商店街は美味しい、楽しいというのをどんどん外に出して行けたらと思います。

清水 来た人に一言声をかけたり、プロとしてのうんちくを教える、そういった積み重ねではないかということだと思うのですが、鈴木さん、どうぞ。
 
鈴木 バブルの頃は会員もいて、会費やその他の収入も入り、商店街は何でもできたんです。祭りも、イベントも全部最初から最後まで商店街ができた。でも、今は、違います。今の商店街は、金ない、人ない、と足りないものだらけで、昔のようにいかなくなって駄目なんだと。しかし、僕は、足りないところは補えばいいんだと思うんです。ここでポイントとなるのは、その商店街の組織が外に開いているかどうかだと思います。外へ向かって、自分たちは足りないんだと言えるかどうか、その1点にかかってくると思います。いいときを経験された方は、自分たちだけでやることに完結して、外に助けてよとは言えない。
 
関内駅から伊勢佐木町商店街という有名な通りがあります。きれいに整備された通りが1丁目から7丁目まであります。そこから先は商店街があるとは思えないような寂れたところになるのですが、そこにお三の宮通り商店会があります。お三の宮通り日枝神社というのがあり、かつては伊勢佐木町よりも商店がいっぱいありました。しかし、今や無残な姿になり、1度つぶれてしまいました。つぶれて、自治会と一体となって、ようやく復活したその商店街にご相談を受け、「ちょい飲み」のイベントを行うことになりました。
 
ちょい飲みは、30~40軒ぐらいが集まって、2500円ぐらい払って、3軒ぐらい廻る企画です。お三の宮通り商店会で、参加店舗を募集したら、3店舗しか集まらない。ラーメン屋が2軒と、焼鳥屋が1軒です。まあ、これでもいいじゃないか、日本一小さいちょい飲みにしよう、ということで決行しました。ただ来てくれた人に申しわけないので海老名の泉橋酒造社長にお願いして新酒を持ってきてもらい、社長が新酒について語って、それから3店舗を廻る、ということにしました。ラーメン屋のおじいちゃんとおばあちゃんが、こんなに人が来たことはないと、喜んで、餃子と炒め物をちょい飲み価格以上に大盛にもってくれて、非常に盛り上がりました。
 
それを見ていた隣のスナックのおばちゃんが、次回やるならうちも入れてよということになり、2回目は参加店舗数が5店舗になりました。増えた2店舗のうちの1店舗は、商店会に未加入の店だったのですが、これを機会に商店会に加わりました。廃業で抜けるところはあっても、加わりたいという店がないような寂しい商店会に、新規会員が加わったのです。翌年は、商店会が「ここまでがうちの商店会だ」と考えていた範囲の隣にあった居酒屋が、入れてくれということになり、3回目の参加店舗数は7店舗になりました。これ以上は、増えないと思っていたのですが、その次には、隣の伊勢佐木町商店街の5、6、7丁目から店舗が、加わることになりました。本当につぶれそうな商店街でも、やはり何かやれば結果が出てくるのだし、やらなければだめだし、開かれた心を持てば、それをやる余地は幾らでもあると思います

清水 住民も含めたお客様を巻き込むことが肝心ですね。その巻き込み方のお上手な小泉さんと鈴木さんと感じますが、実はその手法は観光と称することができます。改めて今度は、今村さんと古性さんには、アドバイスいただければありがたいです。

今村 商店街自体にコンセプトを持つこと、それから、このコンセプトに合わせてどんな人たちに来てほしいのかということを考えることが大事です。みやのかわの
小泉さんのところはアニメの『あの花』の舞台になった聖地。ターゲットはアニメを好きな人たち。これは非常にはっきりしたコンセプトです。その商店街なりの特徴、それを成り立ちから掘り起こしてもいいですが、そういう特色を出していくのが商店街全体の工夫としてあると思います。

東京の亀戸に香取商店街、香取神社という小さな神社があります。その香取神社の歴史を掘り起こしていくと、勝ち運がつくといういわれがあった。だから有名なアスリートがそこにお参りして、優勝している。そこで香取神社商店街を、またの名を勝ち運商店街にして、勝負をかけたい人たちに来てほしいとして集客力アップを狙いました。これもやはりコンセプトとターゲットをはっきりさせたということです。集客力アップの仕掛として、商店街にあるおみそ屋さん、お菓子屋さん、漬物屋さんと一緒に、ちょっと食べ歩きができるような、フィンガーフードを開発して、つまみ食いしながら、食べ歩きができるようにしました。
 
その商店街の特色を出していくというのが大切です。恒常的に、同じコンセプトでもいいし、この時期のこのイベントだけはこういうコンセプトでいこう、ということでもいいと思います。地元の人をターゲットにするときと、首都圏から来る人をターゲットにするときに、売るものを別にする工夫も必要かと思います。例えば、長野県の善光寺通り商店街、表参道の商店街では、来年ご開帳があるので、首都圏からのお客さんが1カ月半で600万人ぐらい来るらしいのです。そこで何とかしたいという話がありまして、各個店を廻らせていただきました。その時、日本全国からこだわりの雑貨を集めているようなすてきなお店がありまして、その店主の方がご自分の商品について、「これは横浜のブランドなんだよ」と説明をされたんですが、私はその時、横浜の人たちが長野に来た時に、横浜のブランドは買わないのではないかと感じました。そこで、何でも長野県産で商品をそろえるのは難しいと思うので、せめてディスプレイを変えるとか、また旅行する人たちが好むような、温泉、大浴場に行くときのグッズがそのお店には豊富に揃っていたので、そういう旅行者向けの商品を、ご開帳のときはもっと店の前に目立つように持ってきたらいいんじゃないですかなどとお話しさせていただきました。だれに何を売るのかというのを常に考えることも、工夫の1つだと思います。
 
渡辺崋山が「商人八訓」を江戸時代につくったのですが、まず朝は召使より早く起きよ、10両の客より100文の客を大切にしろ、買い手が気に入らず返しにきたならば売るときより丁寧にせよ、繁盛するに従ってますます倹約せよなどが挙げられています。現代にも商店街として商人の心得として、この八訓のようなものがあればいいのではないかと思うのですが、そこに是非、入れてほしいのが、「互いの店を褒めよ」、「互いのお客を回せ」、です。

清水 外国人も含めて、商店街ツアーを広げていくやり方など、何かアドバイスはありませんか。
 
古性 商店街を他人の目で見てもらうというのが大切だと思います。先ほど鈴木さんが話された若松マーケットは、商店街の人たちは、「うちの商店街なんか何もないし、ただのぼろい商店街で」とおっしゃるんですが、こんなところが横須賀にあるのかと感心する程、レトロでいい雰囲気の商店街なんです。それは他人の目が見て初めて、すごいとわかるものなんです。

商店街の方々というのは、同じ所でずっとご商売されていて、だんだん売れ行きが落ちてくると、「もうおれたち、何をやってもだめだから」と、元気をなくしてしまっている場合があるのですが、そういった時も行政や我々のような者たちが行きまして、「何言っているの、ここがいいじゃない?」「これをやろうよ」「こういうところがおもしろいから、こういう商店街ツアーでやってみようよ」と言うと、皆さん、少し元気を取り戻してきてくださいます。私たちには、商店街に元気を出してもらう、たきつけるという役割もあります。

商店街に元気になってもらうこと、商店の人たちと違う視点で、その商店街の面白いところを教えてあげるということ、そういうことを提供するのが行政や、我々のような商店街を支援する団体の役割だと思います。
 
インバウンドの話ですが、今のところ、手をつけられていない状態です。横須賀の本町商店街、どぶ板通りという名称で知られているところは、米軍基地のすぐ外にあるのでもともと外国人相手で商売をされています。ただインバウンドではなく、日本人が夜にそのどぶ板の商店街に飲みにいくと、ドルでお酒が買えて、まるで外国のようだというのを楽しんでいただくような感じです。外国人向け観光というのは今後の課題ですが、日本人が見て楽しい商店街は、外国の方も楽しんでいただけると思うので、今後も力を入れてやっていきたいと思っています。

清水 事前にいろいろなご質問もいただいています。何人かの方から、行政のいろいろな制度や資金を活用したいのだけれども、なかなかそういった知識もないし、利用するのもちょっと大変なのですがというお悩みをいただきました。みやのかわ商店街はいかがでしょうかというご質問があるのですが、いかがでしょうか。
 
小泉 確かに資金繰りは大変だと思います。うちの商店街の年会費は6000円で、114店舗なので、基本的には年間70万円弱ぐらいの会費の収入があります。また商店街で年に5回出すチラシの広告部分でも収入があります。広告を出せるお店はそれほど多くないのですが、チラシに載れば、地図も出ますし、お店の紹介にもつながるということで、チラシにお店を載せてほしいということで商店街の組合に加入してくるお店もあり、年々広告の数も増えています。その他に、にぎわい補助金など国の補助金を、商店街の1つの起爆剤の資金源として必ず使わせていだたくようにしています。
 
ただ、先ほどもありましたが、その書類をつくるのが非常に大変で、私たちは商工会議所のメンバーでもありますので、商工会議所にお手伝いをしていただきます。そうしないと、1つの商店街で補助金を活用することは難しいです。

清水 最後に鈴木さん、商店街の恒常的なにぎわいにつなげていくといった観点から、何か一言ありますでしょうか。
 
鈴木 先程、補助金を活用したいという、商店街のお話が出ましたが、補助金には必ず自己負担があります。例えば3分の1ぐらいは自己負担です。その3分の1が負担できないという商店街が、神奈川県内でも急増しています。実感としては8割近くの商店街がそういう状況に陥っていると思われます。ですからそういう商店街の人が相談にいらしたときに、「補助金制度も使えない、お金もないというのだったら何もできませんよ」、ということでは私の仕事は何もないんです。だから、お金で解決するのではなくて、「どこでも、いつからでも」というキャッチフレーズにしていますが、「知恵とネットワーク」をこちらから提供して、なんとかお金のない商店街にも元気になっていただけるようにと心がけています。補助金を使えるところはもちろんどんどんそれを使って元気になっていただいて、補助金の使えないところは、お金で解決するのではなく、知恵とネットワークで元気になっていただく。それが持続性につながっていくのだと考えています。
 
清水 商店街の魅力や意義が、地域にとっても必要で、住民が豊かで楽しい生活をするにはこれが不可欠だということがよくおわかりいただけたかなと思います。商店街はなかなか大変な状況なのですが、その魅力や意義というものを、観光という手法を使って、お客様に伝えていく、そしてお客様を巻き込んで商店街を元気にしていくということを持続的にやっていかなければいけないのかなと感じました。限られた時間でございましたが、パネリストの皆様、ありがとうございました。聴衆の皆様、ありがとうございました。以上で終わりにしたいと思います。
 

閉会
主催者挨拶

株式会社全国商店街支援センター 代表取締役社長 桑島俊彦

 
 
商店街は、元気になるために、自分たちみずからが発信力がなければいけないと思います。行政に対しても、議会に対しても、今まで上意下達型の時代が続きました。やはりボトムアップ型になっていかなければいけない。

まちづくりは行政や政治の力を借りないわけにいかない。我々もしっかりと情報を共有しなければいけない。産業政策など商業の方だけではなく、危機管理から、教育から、福祉から、いろいろな方々にも参加してもらいながら、理事会等を有効に活用し、情報の共有をしていく必要があると思います。
 
明後日、世田谷の松陰神社で幕末維新祭りをやります。これも商店街がはじめて、国から予算を2000万いただいて、それから23回続いているすばらしい祭りになりました。もう地域の伝統文化になりました。このように無を有にして、にぎわい創出を図るということが大事だと思います。

これから国も商業政策で、しっかり地域創生の力でやってくれると思いますので、我々も大いに期待し、皆様方のますますのご奮闘、ご健勝を祈念して、ご挨拶にします。ありがとうございました。
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