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全国各地の商店街活性化の事例から、「商店街活性化のヒント」になるノウハウをご紹介します! 商店街支援ノウハウ

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「商店街フォーラム」 パネルディスカッション

個店の活性化とこれからの商店街活動

■新潟会場
期日 2013年2月27日(水) 14:50~
場所 チサンホテル&コンファレンスセンター新潟
コーディネーター 松島茂氏 東京理科大学大学院 イノベーション研究科 教授
パネリスト 酒井幸男氏 新潟市上古町商店街振興組合 専務理事
松井洋一郎氏 岡崎まちゼミの会 代表
谷垣友里氏 ROOT代表
桑島俊彦 (株)全国商店街支援センター 代表取締役社長
■岡山会場
期日 2013年3月7日(木) 14:50~
場所 岡山国際交流センター
コーディネーター 松島茂氏 東京理科大学大学院 イノベーション研究科 教授
パネリスト 黒田浩一氏 協同組合岡山市栄町商店街 専務理事
阿部眞一氏 岩村田本町商店街振興組合 理事長
松井洋一郎氏 岡崎まちゼミの会 代表
谷垣友里氏 ROOT代表
桑島俊彦 (株)全国商店街支援センター 代表取締役社長

パネルディスカッションが新潟・岡山の両会場で行われた。
新潟会場では、商店街と個店双方の活性化が重要というテーマについて、また、岡山会場では主テーマに加えて、街商人(地域全体の視点を持つ商店主)やリーダーの大切さについて議論された。

活性化のカギは、個店の繁栄と商店街の自覚 [新潟会場]

初めにコーディネーターの松島氏が、「商店街は個店の集合体です。個店の活性化なくして商店街の活性化なし。商店街の活性化なくして個店の活性化なし。どちらを先に手をつけるのか、双方がスパイラルアップするにはどうすればいいのか。この難しい課題について、パネリスト各自の地域での取り組み体験をうかがってから議論しましょう」と切り出した。

パネルディスカッション風景

コーディネーター
東京理科大学大学院
イノベーション研究科 教授
松島茂氏
1973年通商産業省入省後、中小企業庁小売商業課長、中部通商産業局長等を歴任。2008年より東京理科大学 専門職大学院教授。

息の長い努力はつながる

上古町商店街振興組合
専務理事 酒井幸男氏
株式会社百貨さかい代表。アーケード改築をはじめ、情報誌「カミフルチャンネル」の発行など上古町商店街の活性化に貢献。

新潟市上古町商店街振興組合の酒井氏は、国と新潟市の補助金のほか、組合の資金も活用した2009年の商店街アーケード改修について紹介した。間接照明にLEDを、また、物が自然な感じに見えるメタライズド・セラミック・ライトを採用することで、年間で従来の4分の1に節電ができ、「温かな雰囲気の商店街」と市民に支持された。さらに、車道の幅を狭め、歩道を車いすが通れる2.1メートル以上に拡幅。車道を15センチ上げて歩道との段差をなくした。これがハード面の対策である。

ソフト面の対策としては、モダンな個店を誘致して老舗と並置するなど魅力的な業種構成を自ら作った。ほか、2006年の振興組合結成時には、「人に温かい町」「古きよきまち」「心知り合う町」「新しいことにチャレンジする商店街」を意味する「温・古・知・新」をコンセプトに商店街のマークをデザイン。広報誌、ホームページを刷新するなど新たな試みを続けてきた。

こうして若者層も取り込み、2007年にいったん2,455人に落ち込んだ通行者数が2009年は2,905人、2010年は3,199人、2011年は3,289人、2012年は3,654人と右肩上がりに増え、空き店舗率は25.3%から4.5%に激減。公示地価価格も新潟市の15%減少に対して上古町は4%減少にとどまった。

支援センターの「平成24年度繁盛店づくり実践プログラム事業」の研修を受講した6店舗では売上が25%(前年対比)~70%(同)と大幅にアップした。酒井氏は翌日開催される「商店街ツアー」で巡る6店舗を紹介。次の世代を担う人たちが「楽しく町づくり、自分のお店づくり、販売」に取り組んだことについて、「将来を懸けた、息の長い努力はつながる」と、個店の繁盛から商店街の活性化への展開に期待を寄せていた。

決め手は人と人づくり

岡崎まちゼミの会 代表 松井洋一郎氏
OA機器販売会社に勤務後、家業である化粧品専門店・株式会社みどりやに入社。「まちゼミ」を中心に中心市街地や商店街の活性化に尽力。

徳川家康の生まれた岡崎市。化粧品店の四代目として松井氏が帰郷した1990年から比較すると、商店街の通行量は7分の1になって空き店舗が増加。後継者が帰ってきても再び出ていってしまうような事態に陥っていた。そこで仲間とイベント開催などに取り組んだが、一時的に人が来るだけで売上は上がらなかった。

「重要なのは来街者の増加ではなくて来店頻度を上げることです。価格・品揃えも大切ですが、差別化の決め手は人です」(松井氏)

松井氏は「人」の例として化粧品店で働く氏の母親を挙げた。47年の知識をもとにしたセールストークは他の追随を許さないという。ただ、来店者が少ないと、せっかくのトーク(人の魅力)も生きない。そこで、「人の魅力」をもっと伝えるために店主が個店の魅力を説く「まちゼミ」を始めた。店主の話を聞いて得られた「顧客の満足」 — 化粧品店でいえば、「お客様のこうなりたいという要望に、まちゼミで店主がきちんと応えてくれた」という満足 — を「個店の売上」につなげる。さらに「街の発展、活性化」につなげるのが狙いである。松井氏はこれを「近江商人の“三方よし"の精神だ」と言う。

「私も最初は商店街の活性化なんて、できっこないと思っていたが、できるんです」(松井氏)

現に、商店街のある文具店の高級筆記具を中心とする万年筆の売り上げが10倍程になった。もちろんまちゼミだけの効果ではないが、個店の努力や仕組みによって大きく変わる。同店自慢の「初心者の為の万年筆講座」は、組み立て万年筆を使って、その必要性や奥深い魅力を語るもの。昼の部8名、夜の部8名の参加者が店主の話に聞き入る。キット代金の500円だけで楽しめるとあって予約がすぐ埋まる人気ぶりだ。

「個店の体力強化が必要で、1店で2家族が飯を食えねばならない。お客様のなりたい姿、望む満足がわかれば、気持ちは顧客に届く。売る気より説明することが大切です。人から需要が生まれるのだから、対面販売の良さを出していけばいい」(松井氏)

各個店が体力を増し、商店街が活性化するには、良いリーダーが出てくることだと松井氏は付け加えた。昔と比べて商店街の他の店のことを知らなかったり、商店街で買い物をしない人がいるが、他店の紹介をするなど、全体を見る目が必要で、その視点を持つのが「街商人」だとする松井氏はリーダーが育つ要件について述べた。

「事業の中でないと人は育たない。目標を決めて事業を行うとリーダーとしてのスイッチが入る瞬間がある。あとは責任と役割を与え、障害を乗り越えていくことが大事」(松井氏)

「まちゼミ」:2003年に愛知県岡崎市の商店街で始まった活性化事業で、 正式名称を「得する街のゼミナール」と言う。 商店主が専門的な知識や技術を無料で教える。大型店には無い消費者との「近さ」を活かしながら、 街の賑わいづくりにつなげる。

新たな個店から地域へ

ROOT代表 谷垣友里氏
京都府園部生まれ。山口県宇部育ち。篠山の歴史・生活文化などをテーマにした暮らしのツーリズムプロジェクトの事務局を運営するなど、地域に密着した活動を続けている。

谷垣氏は「城下町篠山(ささやま・兵庫県)の町並みを観光客に見てもらいたくて」現業に就いた。氏の活動の舞台、城下町の東に位置する下河原町商店街では、後継者不足のために営業していない店舗が多かった。店が「商いの場」ではなく、家主の「生活の場」となっており必然的に店舗物件が少なかった。そこで、家主と開業希望者を結ぶマッチングを始めた。

初めに行ったのが組織を横断する「空き物件情報の共有」である。次に、交渉ルートを家主と担当者に一本化した。行政やNPO、商工会などがそれぞれ家主にアプローチすると、家賃をはじめとする情報が人ごとに食い違って、「あの人はこう言った」「この人はああ言った」と家主が混乱するためである。家主と担当者との交渉がまとまった次の段階から改修や地域調整をする。さらに、「対象店舗の立地にふさわしい人を」という家主の希望を聞き、「お試し出店」を経てから誘致することとした。

この「エリアマネジメント」という方法によって3年間で城下町はじめ市内一円で30件のマッチングができ、カフェ、ピザ屋、雑貨店など観光客回遊の拠点となる新たな店舗が出店できた。ある商店主は、「都会に出店していたら孤独だったかもしれない。でも、篠山では開店祝いに町の人が見学に来てくれて嬉しかった」と語ったという。

谷垣氏も、「新しい店舗のオーナー同士の交流会も自然発生し、お互いのお客様を篠山市全体のお客様としてお迎えしよう、という動きが生まれています。カフェ同士でお客さんを紹介することも増えています」と、「人のつながり」「個店と個店のつながり」が地域へと広がり、「商店街ツーリズムができれば…」と述べ、さらに取り組みを強めていく姿勢を見せた。

個店の工夫による活性化を経て、商店街を公的存在に

(株)全国商店街支援センター
代表取締役社長 桑島俊彦
全国商店街振興組合連合会前理事長。東京都商店街振興組合連合会理事長、烏山駅前通り商店街振興組合理事長など要職を兼務。全国の商店街に普及しているスタンプ方式のモデル「烏山方式」の考案者として知られる。

桑島社長は、烏山駅前通り商店街の理事長として自ら手がけたスタンプ事業「烏山方式」について述べた。事業は1965年、商店街の近くに大型店舗が出店したことへの対策として始まった。買い物をするとスタンプがもらえ、それがシャトルバスの乗車券にもなり、イベントの参加券にもなり、買い物券にもなる。地域通貨として商店街に利益が還元されるので、「スタンプはサケと同じで地元の川に帰ってくる」と言う。

化粧品店の店主でもある桑島社長から見ると顧客は二極化している。ディスカウント志向の人と高額商品でも買ってくれる人である。後者の、高価でも価値のある品揃えや個店自体の魅力に魅かれる人に対しては、「個店としての魅力づくり」が欠かせないという。店舗では、品揃えに腐心するほか、トータルビューティとして、自社ビルに酸素カプセルの機器を置き、岩盤浴も行っている。

桑島社長は個店同士で商品を買うことも勧める。

「娘が結婚する時に家電一式を家電量販店で買いたいと言ったのです。商店街理事長という職にあるため、サングラスをして他の商店主に見つからないように変装し(笑)、娘に同行して、全製品の金額を確認しました」

地元の電気店は大手電機メーカー専属なので、さまざまなメーカーの製品を集めるのは難しい。それでも店主に金額を提示したら、自身のネットワークを使って希望の製品を揃えてくれたという。おまけに「ディズニーランド招待券」がついてきたという「地元ならではの話」に会場が沸いた。

個店独自の工夫と個店同士の協力という話のほか、桑島社長は、商店街の別の側面について「商店街が元気なところは孤立死も少ない、犯罪もすくないわけです。それで、安全・安心を担っているわけです。そうした商店街活動を意識しながら、結果的には個店の売り上げと利益になるようにしていくことが必要」と語った。

最後に、松島氏が笑福亭鶴瓶のテレビCMを引き合いに出して話をまとめた。鶴瓶が「膝が痛いから歩けなくなる」のか、「歩けないから体が重くなって膝が痛くなるのか」という問いに対して、「どっちも」と答えるというもの。CMと同じように、「卵(個店)が先か、鶏(商店街)が先か」と、入口について議論するより、「個店と商店街のどちらも互いを視野に入れながら、ダイナミックに発展していくことが大事」として話を締めくくった。

地域の視点を持つ街商人の育成を [岡山会場]

コーディネーターの松島氏が各パネリストに、「最初にご自分の体験、経験を話していただき、その後、街商人(地域の視点を持つ商店主)、リーダーをどう育成するかについて話していきたい」とテーマを挙げた。

パネルディスカッション風景

変化についていくには勉強が必要

協同組合岡山市栄町商店街
専務理事 黒田浩一氏
岡山市生まれ。近畿大学卒業。美しいきもの福岡屋の三代目店主。表町商人塾会頭。キモノコンシェルジュを名乗り、地元ラジオ局のパーソナリティを務めるなど多彩な活躍で知られる。

黒田氏は、街商人について考えるには、「商売とはどういうことか」について考えたほうがいいとして「不易流行(ふえきりゅうこう)」という言葉を挙げた。変わってはいけないものと、変わらなければいけないものがあるという意味である。黒田氏は、変化の有無を見極めて上手に使うことが商売の基本であり、変化についていくには「勉強しかない」と述べた。

黒田氏は表町で商人塾を開いているが、受講者は3つのパターンに分かれるという。
(1) 全く勉強する気がない
(2) 勉強し続ける
(3) 勉強の仕方がわからない、時間・資金がないという人

勉強する気があっても方法がわからない方を手助けする方法をいろいろ考える過程で、全国商店街支援センターの「繁盛店づくり実践プログラム事業」の研修を知り、3年ほど前、希望する店主に受講してもらった。自身も勉強し続けているが、続けることで街商人になれるのではないかと述べた。

「勉強する気はあるけれど、一歩足が出ないという人に足を出してもらうにはどういう工夫をしていますか」(松島氏)

コーディネーター・松島氏の質問に、黒田氏は「仲間」というキーワードを挙げ、
「勉強するにしても個店1つだけでは難しいので1人2人と誘う。こうして3人になると他の人も"一緒に勉強しましょう"と増えていく」 と、その効用を述べた。

経営とコミュニティの両輪で商店街を活性化

岩村田本町商店街振興組合
理事長 阿部眞一氏
長野県佐久市出身。有限会社和泉屋菓子店代表取締役社長。佐久商工会議所副会頭。長野県商店街連合会監事。佐久市商店会連合会会長。

岩村田本町商店街は、1965年に近代化計画によって店舗をビル化して高度成長の波に乗った。しかし、1997年の長野オリンピック開催に伴って交通網が整備されて大型店舗が進出し、その売り場面積が9割、商店街の売り場面積が1割という事態となった。

このことに危機感を覚えた阿部氏は、平均年齢36歳というメンバーで組合を立ち上げた。組合で開催したイベントが成功しメディアにも取り上げられ商店街が活性化したと思っていたが、気がつくと42店舗中、15店舗が空き店舗の商店街になっていた。

「商店街の原理原則は1店舗1店舗がきらりと光ること、魅力ある店の集合体が魅力ある商店街なのではないか」(阿部氏)

そう考え、中小企業診断士に相談したところ、「経営者になるための勉強が必要」との指摘を受けたという。

阿部氏はその後、若手6人で後継者養成塾という勉強会を開いて経営、生産領域、変化への対処方法などさまざまな勉強をし、「街があるからこそ商店街という商いの場がある。商店街は利用してくださるお客様のものだ」という原点に立ち返った。そして、商いの場であり、コミュニティの場でもある商店街の2つの機能を両輪にして、「地域密着顧客創造型商店街」という理念のもと、地域の人とともに暮らし、働き、生きる商店街を目指した。

商店街イメージについてのアンケート調査を行ったところ、「汚い」「暗い」「くさい」「怖い」などという感想が並んだという。原因はシャッターの閉まった空き店舗だった。

そこで、空き店舗対策に注力。6人の起業家が入る「チャレンジショップ」を立ち上げたほか、「大家さんサミット」を開催した。このサミットは大家さんに商店街の若者を応援するために格安で物件を貸してほしいと訴えるのが狙いだった。同サミット開催以来、創業者が増え始め、塾を直営する、若い母親のためのコミュニティ広場を作る、電子マネーが使えるようにするなど新しい試みが実施され業績が上がってきたという。

松島氏は、黒田・阿部両氏の話に共通するキーワードとして、「原理原則と勉強がある」と指摘。さらに、個店を経営しながら、商店街を経営するということが街商人に通じる重要な点だとした。

自分の商売だけでなく、商店街全体のことを考える

松井氏は、「まちゼミ」を始めるまでは、「商店街の活性化なんか絶対にできないし、自分のことで精いっぱいだった」。それが、「まちゼミ」を始めるようになった10年前から「公共の奉仕に寄与する」という思いが芽生えてきたという。

まちゼミを行う店舗は健康・美容・飲食・サービス・物販から金融まで多様。テーマも「米ぬか手づくり石けん教室」「あなたにぴったりのまくらをつくってみませんか」「ジュエルデコレ ペンダントアクセサリー製作」(2012年夏の告知チラシより)と多彩である。参加者には「講師の方が優しく、説明が丁寧だ」と好評である。

このように「無料で、ノウハウがわかって、説明が丁寧」と、店主の人柄・店の魅力がクチコミで伝わることで来店者が増えていく。このスタイルで10店舗から始まった実施店舗が現在は130店舗にまで増えている。「三方よし」の言葉通り、地域に広がっているのだ。

まちゼミの成果について、松井氏は、「売上が上がるところから始めた仲間の店主が新しい事業を行う際のリーダーになり、商店街のことを考えるようになったことです」と語る。また、単に参加店舗数が増えるというだけでなく、成果を出すには 「勉強が大事」とした。この考え方は黒田氏、阿部氏と通底するものであり、その大切さがさらに浮き彫りになった。

エリアマネジメントをキャッスルホテル構想に活かす

谷垣氏は、兵庫県の城下町・篠山で、エリアマネジメントの手法を用いて住民、団体、家主と開業希望者を結びつけ、3年間で30件のマッチングを成功させた。今後は、「キャッスルホテル構想」に取り組みたいと語った。

「キャッスルホテル構想」は、城下町・篠山全体をホテルと捉え、宿泊して楽しめる町として環境整備をすることで、日帰り客の7倍から9倍消費するという宿泊客を増やそうというものである。

藤堂高虎が縄張り(設計)した名城・丹波篠山城址には多くの観光客が訪れるが、バスで乗り付けて駐車場と城との間を往復するのみで町を回遊することなく帰る日帰り客が多くを占めている。谷垣氏は、城だけでなく武家屋敷や、重要伝統的建造物群保存地域に指定された旧商家町の町並みを「じっくりと、できれば回遊して、さらには宿泊して見てほしい」と考えている。

ただ、篠山の町並みは観光資源として十分な魅力を持っているが、大阪駅からJRで1時間、篠山口駅からクルマで15分と、大都市から比較的近いため、宿泊客を増やすためには宿泊施設はもちろん、買い物をしたり、お茶が飲めたり、歩きやすかったりと、まちの快適性をさらに高めなければならない。

そのために生きてくるのがエリアマネジメントの手法である。地元の、さまざまな団体、店舗、行政の思いを一つにまとめる谷垣氏は新たな挑戦への思いを語った。

一つにまとまることの難しさ

コーディネーターの松島氏が、谷垣氏の「キャッスルホテル構想」を「リーダーのもとでエリア全体を変えていこうとする試みである」と指摘。さらに、阿部氏らの空き店舗対策との共通点として、「どういう業種が入ってきたら商店街が一つにまとまるかマネジメントしていること」を挙げたところ、各パネリストから次のような言葉が返ってきた。

「商店街の組合同士が連携することはまず無理です。商店街を経営するのは若手しかいないと思っています。エリアごとの連携、これはまちゼミにもつながる。若手が街をなんとかしようという姿になっていかなくてはならないのではないか」(阿部氏)

「エリアマネジメント、タウンマネジメントは重要であると思います。まず自分の商売を何とかしたいという欲求を満たす中で、結果的に街商人が出てくると思っています。外部のリーダーはその町とのコーディネートがうまい人が来ていただければ街は活性化していく」(松井氏)

「表町も8つの商店街に分かれていて、一つにまとめるというのは非常に難しい。栄町商店街に限って言うと、若手に期待する部分も大きい。そこで、外部の方を青年部のサポーター会員として商店街の企画に参加してもらっている」(黒田氏)

まち力がつくと個店がよくなる、まとまりは存続につながる

黒田氏や阿部氏が挙げた「一つにまとまることの難しさ」という話を受けて、桑島社長は、4つの振興組合を1つにまとめて250店の振興組合を作った経験について語った。この振興組合は成果が上がって、土地の値段が上がり、最寄り駅の乗降客が増え、個店の業績も良くなったという。

「まち力がつくと、個店も良くなる。だから小異を捨てて大同につかねばならない」(桑島社長)

また、商店街としてまとまる必要性を桑島社長は訴える。そこに強いリーダーがいれば行政と話ができるし、地域に貢献しないチェーン店でなく、「商店街で生き、地域に貢献する人」を空き店舗に入れるマネジメントも可能になる。良いリーダーの存在の重要性は松井氏の話、また、地域が望むような人を商店街に入れるよう調整することは谷垣氏の話と通底するところである。

商店街への強制加入や負担金の強制徴収はできないのだが、桑島社長は全国商店街振興組合連合会の理事長になったとき、当時の経済産業大臣に「条例をつくったらどうか」という示唆を受けた。そこで、世田谷区に掛け合って「加入促進条例」を作った。この条例にも強制力はないが、次第に「応分の負担をしよう」という機運が高まってきたという。いまでは全国92の自治体に同様の条例があるという。

応分の負担をするということは、商店街がコミュニティの担い手という側面を持っているからである。「支援を受けているからこそ、勉強を続ける。消費者懇談会を開催するなど義務を履行しなければいけない。公的な存在になること。そこに商店街存続のカギがある」と桑島社長は語った。

街商人を育成するために

松島氏が街商人を育成するための方策を尋ねたのに対し、各氏は次のように答えた。

「商店街の集約した意見を行政に上げて、行政・議会・商店街のトライアングル関係でまちづくりをすることが大事」(桑島社長)

「地域のみんなで大事にしていることを大切にしてくれる人に来てもらいたいという声を聞き、志の同じ方たちとチームを組んで行動していくことが大切で、これからもそのように行動する」(谷垣氏)

「事業の中でないと人は育たない。目標を決めて事業を行うとリーダーとしてのスイッチが入る瞬間がある。あとは責任と役割を与え、障害を乗り越えていくことが大事」(松井氏)

「夢物語を語り合うと、価値観というか何のために商店街活動をしているのか明確になる。先祖から預かっている土地を子どもたちに託すことが活動の一つのテーマになっている。商店街は畑、耕すのは我々と思って商店街活動をすれば愛着が湧く。1理事1事業制で役割を持ちながら、フラットに意見を集約していける組織で活性化を考えている。そのためには個店がお客様に提案できる主力商品を揃え、顧客の8割を占める女性に提供していくことが重要」(阿部氏)

「岡山の商店街には力強いリーダーがいる。一つ足りないことは、その人に身を預けて一緒にやっていこうという気持ち」(黒田氏)

最後に、松島氏が、商店街が一つのものとして経営されることが活性化のカギであり、個店の繁盛もそこにかかっている。そのためには、「街全体の視点を持った街商人がリーダーとして導き、フォローすることが重要」との考え方を示して議論を締めくくった。

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