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全国の魅力的な商店街をつくるための取り組み事例をご紹介します! 商店街活性化事例レポート

みんなが自転車を押して歩く安心の風景が生まれたのは、商店街発のユニークな取組みから イベント 地域振興 安心・安全 情報発信

路上駐輪や自転車のアーケード内走行などの問題を抱えている商店街は多い。兵庫県尼崎市の三和本通商店街でも、来街者の自転車マナーの向上は大きな課題だった。解決のため立ち上がったのは商店街の女性陣。柔軟な発想と行動力で「自転車マナー日本一」の商店街を目指して突き進む。

商店街名 三和本通商店街振興組合/兵庫県尼崎市

楽しい個性派イベントで自転車マナーが数段アップ

商店街内の看板も三和本通商店街らしさが。感謝を先に伝えることがマナー向上の秘訣だ

天ぷらや煮物を販売する惣菜店、生鮮食品店、生活用品店などでにぎわうアーケードの下を、自転車をゆっくり押して歩く老若男女の姿。その傍らには、「自転車押してくれてありがとう!」と書かれた可愛いイラストの看板が-。
ここは、阪神電鉄本線尼崎駅の北西エリアに縦横に延びる大型商店街のひとつ、三和本通商店街。900mほど離れた尼崎駅への経路にもなることから、自転車利用者の通行が多く、かつては自転車と歩行者との接触などの事故が頻発していた。’16年9月には、なんとニュース番組で〝自転車マナーが日本一悪い商店街〞として紹介されてしまう。

その状況に、「なんとかせなあかん!」と奮起したのが、当時同商店街振興組合の理事だった鶴留朋代さんをはじめとする、女性の有志たちだ。商店街での安全な自転車利用、つまりは〝自転車の押し歩き〞という交通マナーを浸透させるため、「ちゃりんこ来恋(こいこい)大作戦!」という委員会を立ち上げた。そのユニークなネーミングについて、「自転車は来ないで! と思っていると誤解されたくなくて。私たちは、たくさんのお客さんに自転車で商店街に来てほしい。だから、〝自転車来て〞〝自転車恋しい〞という想いを名前に込めました。そして商店街に来たら、しっかりマナーを守って押し歩きをしていただく。事故がなくなり、みんなが安心して買い物を楽しめる商店街になりたいんです」と鶴留さんは語る。
「ちゃり恋会議」と称するミーティングで企画を練り、第1回目のイベント「ちゃり恋大作戦!!」を開催したのは、会発足からわずか2カ月後の’16年11月のこと。特殊めがねの着用で子どもの目線になり自転車の危険度を知る体験会や自転車マナーに関するクイズの実施など、手探りながらも初めての啓発イベントを成功させた委員会は弾みをつけ、それから次々と新しい企画を打ち出した。

’17年5月開催の第2弾では、地元の幼稚園児110人に「すきなじてんしゃ」というテーマで絵を描いてもらい、それを商店街の各店舗に展示した。加えて尼崎警察署などの協力のもと、園児と保護者、地域住民など合わせて200人による交通安全パレードも実施し、活動は広がりをみせる。パレードの当日には、実行委員の7店舗でサービス商品を盛り合わせにして特別に販売。盛り合わせと絵の展示から、イベントを「さんわの盛美術館」と名付けた。ちなみに、’18年5月に実施した2回目の「さんわの盛美術館」では、40もの店舗が特売に参加。回を重ねるごとに取組みへの理解が店主たちの間にも浸透してきている。

’17年11月には、もっと面白い企画をと、「押し!? チャリンピック」なるものも開催。頭にピンポン玉を置いた皿をくくり付け、自転車を押しながら一定の距離を歩いて設定時間ぴったりにゴールできるかを競うこのユニークな競技は評判を呼び、近隣住民はもちろん、遠方からも多数の参加者が集まった。
「イベントでは、楽しみながら自然と意識が高まり、それでいてマナーが向上するような仕掛けを心がけています」と話す鶴留さんら実行委員は、もちろん日常においても、マナー啓発を徹底。自転車に乗っている人に声をかけ、降りてもらったら、「降りてくれてありがとう!」と感謝の意を伝えている。
こうしたハ・レ・とケ・の両面にわたって取組みを粘り強く続けた結果、自転車走行は激減し、安心安全な商店街が実現しつつある。

多様なイベントで安心安全を促進!

EVENT 1 さんわの盛美術館

’17年、’18年の5月に開催。
100枚超の幼稚園児の絵を各店舗に展示し、その保護者や友人らの来店にもつながった。
「お店や店主を地域の方に知っていただくきっかけにもなれば」と実行委員。

EVENT 2 押し!? チャリンピック

’17年11月に開催。
その年に開催されていたオリンピックとかけたダジャレイベントながら、メディアでも多数取り上げられ、自転車を押し歩くことの大切さもしっかりと伝えた。
’18年秋も開催。







EVENT 3 尼崎市立中央中学校生徒会連携イベント「歩きスマホをやめよう!」

尼崎市立中央中学校の生徒会メンバーと、地域の公民館でダンスを習う小学生がつくり上げた「歩きスマホ防止」の啓発劇。’18年7月31日、8月21日の2日間で開催された。実現に向けた来恋夢神社での議論も、生徒たちには大きな財産に。

商店街がハブに。人とアイデアが次々と集まる

「ちゃりんこ来恋大作戦」の中心メンバー・高下光永さん(左)、鶴留朋代さん(中)、坂本知嘉子さん。それぞれの商売の傍ら、明るさと行動力を武器に人脈を培い、活動を広げる。大作戦のTシャツはオリジナル

ところでこれらの独創的なアイデアは、どうやって生まれるのだろうか。月に一度実施の「ちゃり恋会議」を覗いてみると、そこには商店街のメンバーのほか、市の職員、学校の教員や生徒たち、地元在住のビジネスパーソンなど実に多様な職種の人が集まっている。自転車をはじめとする交通のマナー向上というテーマは、地域コミュニティの課題でもあり、教育やボランティア活動との親和性も高い。そのため、商店街の枠を越えた多くの人々の参加が可能となるのだ。
 
また、会議の場所が開放的であることもプラスに働く。会議は、空き店舗を活用してつくられた「来く恋る夢む神社」(地元の尼崎貴布禰神社から分祀してつくられた商店街の神社)の境内スペースで行われているが、シャッターが開け放たれた6畳ほどのオープンスペースで膝を交えて話し合う人々の様子は、否が応でも道行く人の関心を引く。そしていったん会議に興味をもてば、実行委員の女性陣が気さくに声をかけてきてくれるので、気軽な気持ちで参加ができるのだ。こうした風通しの良い組織運営が、多くの協力者とアイデアを生むこととなる。
「商店街のメンバーだけでは想像力も行動力も限界があります。でも、外からたくさんの人たちが私たちの考えもつかないようなアイデアやヒントを持って来てくれるんです。私たちは、その一つひとつを商店街でどう実現できるか考えていくだけです」
 
’18年の夏のイベント「歩きスマホをやめよう!」も、地元の中学校の生徒会から持ち込まれたアイデアを、商店街がフルサポートして開催にこぎつけた。こうしてイベントを重ねるごとに、商店街は地域の人々をつなぐ場、そして人々のアイデアをかたちにする場としても注目されるようになってきた。
 安心して買い物ができる場づくりを目指して2年前に始めた取組みがきっかけで、三和本通商店街は地域コミュニティのハブとしての役割も担うようになってきた。今後、この商店街にどんな人々が集まり、どんな面白いことが起こるのか、楽しみは尽きない。

 

 



 
★この記事は、商店街活性化の情報誌「EGAO」の2018 Autumn(秋号)に掲載されています。
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