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全国の魅力的な商店街をつくるための取り組み事例をご紹介します! 商店街活性化事例レポート

街に子どもの歓声を。 子育て・高齢者支援 安心・安全 コミュニティ

小溝筋商店街振興組合(おみぞ筋商店街)が運営する「子育てほっとステーション」。
'15年9月に開設して以来、近隣に住まう多くの子育て世代に利用されている。その人気の高さは、商店街ゆえの安心感と、利用したくなるコンテンツ。そこで形成されるコミュニティが、商店街へ好影響をもたらしている。

商店街名 小溝筋商店街振興組合/兵庫県姫路市

共助の精神を仕組み化、目指すは地域の「寺子屋」

その空間に一歩足を踏み入れると、子どもたちの元気な笑い声が耳に飛び込んでくる。室内の床には安全を確保するためのカラフルな低反発マットが敷かれており、子どもたちはその上でそれぞれ好きな遊びに没頭している。隣のテーブル席では、買い物を終えたママたちがおしゃべりに興じている——。

ここは、姫路駅からほど近いおみぞ筋商店街内のビル2階にある子どもの一時預かり施設「子育てほっとステーション」。'15年9月に空き店舗を活用して開設し、商店街発の〝保護者と子どものコミュニティ.として、多方面から注目を集めている。
基本的な仕組みはこうだ。対象は小学生までで、親子で利用する場合は無料。オムツ替えや授乳、あるいはちょっとした休憩に使うことができる。一時預かりの場合は、1時間800円で利用可能。その間子どもは運営スタッフや利用者が見守り、保護者はのんびりと商店街で買い物を楽しむことができる。口コミで評判が広がりオープンから3年連続で利用者は増加中。'18年8月現在、一日3.4組が利用し、イベント時は20組以上が訪れるほどになった。

「安心して子どもを遊ばせながら情報交換して、保護者同士がつながる場所になってくれればうれしい」そう話すのは、同商店街振興組合理事長の蓑畑八基(みのはたやおき)さん。マンション建設がさかんな周辺エリアでは、若い世代の新住民や子育て中の母親たちが、地域との接点をもてる場所がなかった。そこで、全国でも珍しい、街なかに住む親子が気軽に来られる施設を商店街自らが運営するというアイデアが生まれたのだ。


 元気に遊ぶ親子たち。室内の遊具はほとんどが寄付。「近くに小児科医院ができた、という情報もここで知りました」と利用者。
 事業所を2階にしたのは、「1階だと子どもの顔が見えてしまうので防犯上不安を感じる」というママの声から。

 

童話の本5冊寄付で一時間分の一時預かり券が発行される

街にフラッグを立てて、施設への来場につなげている

施設では、利用者の要望を汲みながら、プロカメラマンによる写真撮影会、幼児から小学生を対象とした英会話教室など、親子が楽しめるイベントも多数開催。特に人気なのが「子育てママのティーパーティー」。子どもを預けた母親が、おいしいケーキと飲み物をみんなでいただくシンプルな会だが、ふだん一人で子育てをするママたちにはかけがえのない交流の場に。
利用者からは「子どもの面倒を見てもらえるので親同士の会話ができる」「地域の情報交換ができる」「食べ物が持ち込みOKでうれしい」といった喜びの声があがる。この施設が誕生してから、おみぞ筋商店街を利用する頻度が増えたという利用者も多い。これこそが蓑畑さんの狙いのひとつでもある。

「大切なのは、ここがあることで商店街にまた来たいと思っていただくこと。そうして来街者が増えることで、商店街が元気になると考えています」
その言葉通り、施設のコンセプトは「保護者の買い物のための一時預かり」。おみぞ筋商店街で3000円以上の買い物をすることで2時間分の一時預かり券を発行するなど、施設利用と商店街回遊をリンクさせた仕組みを導入している。また、商店街の若手店主や従業員の子どもは利用料が無料。商売に集中しやすい環境づくりにも活用されている。

さらに、商店街らしい共助の精神を巧みに取り入れている点も特長だ。他の子どもの遊び相手になったり、施設の作業を手伝うことで一時預かり券が発行される。大きなコストをかけずとも、助け合いで施設の運営をまかなっているのだ。
子育てママたちだけでなく、シニアヨガ教室など多世代が商店街に足を運んでもらえるような仕掛けも戦略的に打ち出し始めた。蓑畑さんと二人三脚で商店街活動に取り組む妻の久恵さんは「今後は地域の寺子屋のような施設にできれば、と考えています。医療施設や近隣の商店街とも連携し、地域全体のコミュニティの場として発展できれば理想的ですね」と次のステップを見据えている。

矢継ぎ早に打ち出す商店街変革の核心

おみぞ筋商店街のために精力的な活動を続ける蓑畑八基さん(左)、久恵さん夫妻

自前でやれることをなんでもやる。そんな蓑畑さん夫妻のスタイルは、苦境を乗り越えるなかで身についたものだ。おみぞ筋商店街は、アーケードが完成した高度経済成長期に隆盛を迎え、バブル崩壊後に凋落の一途をたどった。一時期は店舗が6割しか埋まらず、人通りもまばらで閑散とした状態に。

現状打破への兆しが見え始めたのは、'11年に八基さんが30代で同商店街振興組合の理事長に就任してから。
「理事長の歳が若くなっても、商店街に変化がなければ周囲を落胆させてしまいます。そこで私は、2年で結果を出すという目標を立てました」

手始めに取り組み、また今も心がけているのは「現状を自分の目で見て、生の声を聞くこと」だ。夫婦で商店街中を走り回り店主たちの意見を聞き、また久恵さんが営む美容室では来街者との日頃の会話にヒントを得る一方で、全国の商店街へ視察に。そこでこの商店街にぴったりだと確信した仕掛けがトリックアートだった。
「おみぞ筋は通学・通勤路としても利用されています。なので、街なかに作品を置くことで、さまざまな世代の方に楽しんでもらいつつ、SNSなどでの発信も自然に増えていくようになるのではないか、と」

     

トリックアートは今後、地元の高校生に図案を描いてもらうというアイデアも

'12年より壁面や道路などにトリックアートを常設展示すると、この活動に着目した市の職員から国の補助金活用のアドバイスもあり、'14年にはNHK大河ドラマ『軍師官兵衛』の放映開始のタイミングに合わせ、城下町らしく和をテーマにした迫力あるトリックアートを掲示。これが県外からも人が来るほどの大反響となり、マスメディアからも注目を浴び、取材攻勢を受けることとなった。結果、おみぞ筋商店街のブランド力は飛躍的に高まり、開業希望者が増加。現在も若者に人気のオシャレなショップやカフェが相次いで誕生している。

夫妻の熱は組合のメンバーにも飛び火し、近年は青年部も復活。子育てほっとステーションを拠点にしたイベントに若い世代が中心となりかかわることで、積極的に意見を言うようになってきた。

「私は若い頃、青年部の先輩から商店街のあるべき姿を教え込まれました。それは、〝商店主は手が空いたら、まずは街のための活動をするべき.という考えです。この考えを若い世代に伝え、チャレンジを続けていくのが使命だと思っています」

商店街が元気になり、熱意のある若手が育ち、楽しく子育てができる街へ——おみぞ筋商店街で好循環が生まれ出している。

      青年部を中心に名物「おでん結び」のイベントも開催。
      右)ママたちが活用しやすいよう、水に強い素材とバッグに 入れておけるサイズでつくった商店街パンフレット

 

 
★この記事は、商店街活性化の情報誌「EGAO」の2018 Autumn(秋号)に掲載されています。
「EGAO」をご覧になりたい方はこちらへ。
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