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全国の魅力的な商店街をつくるための取り組み事例をご紹介します! 商店街活性化事例レポート

空き店舗が新しい価値を生む。人をつなげて街を変えていく 地域資源 地域振興 個店活性 人材育成 コミュニティ

活性化に向けた取組みは、持続的な発展が大切だ。そこで、かつて注目を集めた商店街の取組みが、現在、どう進化を遂げているのかを追跡取材した。

【空き店舗対策】
平成25年度 商店街の自主取組み提案事業 活用
ゆりの木通りのもつ自由な雰囲気が人の動きをつくり、今後の大きな試みを生む土壌となっている様子を取材。

・店舗数
2013年67店 ⇒ 2017年90店

商店街名 ゆりの木通り商店街/静岡県浜松市

イベント開催のほか、普段から店主や地域住民たちが自由に打合わせスペースとして使っている「黒板とキッチン」

築50年を超えたビルが並ぶゆりの木通りは、近年クリエイティブスポットとして注目され、若き出店希望者が後を絶たない。人と人とがつながり、新たなアイデアや企画が生まれ、商店街はさらに魅力を増してゆく。その進化の様子に迫る。

スタイリッシュな空間に人々が集まる街

     

黒板とキッチン 運営・大と小とレフ 取締役
鈴木一郎太さん

ゆりの木通りの東の玄関口にある立体駐車場「万年橋パークビル」。その1階に、ユニークな空間がある。「セミナールーム 黒板とキッチン」はその名のとおり、大きな黒板とキッチンが特徴だ。’11年にビルの空き店舗を活用してつくられた交流スペースは、’14年に改装されて現在の斬新なデザインとなり、さらに魅力を増した。

「黒板に記される文字や絵、キッチンで作り出される料理が人によってさまざまなように、私たちの周りには多種多様な知恵や技術、感性があります。『黒板とキッチン』はそうしたものが重なっていく場所として開かれているのです」と、この空間をデザインした鈴木一郎太さんは語る。
事実、ここには多くの人が集う。商店街の店主だけでなく、学生やクリエイターなどさまざまな人が集まり出会うことで、新しい刺激やアイデアが生まれ、街の人を楽しませる企画が次々と紡ぎ出される。

「黒板とキッチン」のように、空き店舗を大胆に改装して新たな価値を生み出す動きは、ゆりの木通りのトレンドだ。この地域の商店街では’09年頃、戦後復興時に建てられた商業ビル内で空き店舗が急増した。しかしこれらの空き店舗は、街に移り住んできた新進気鋭のクリエイターたちの手により、ここ数年次々と息を吹き返している。ゆりの木通りに面する古いビルの中では、今、数々のスタイリッシュなアトリエ風の空間が生まれ、若手の出店が続いている。


若手創業者がめざすこだわりのある物販店の街

田町東部繁栄会 会長・万年橋パークビル 経営
鈴木基生(もとお)さん

建築デザイン事務所403architecture[dajiba]主宰
彌田(やだ)徹さん

'13年、ゆりの木通り商店街は自らのありたい姿を「こだわりのある物販店の街」と明確に定め、翌’14年から’15年にかけて、「こだわりの店を増やして商店街の魅力をアップ!」と称したプロジェクトを実行(平成25年度商店街の自主取組み提案事業、平成26年度トライアル実行支援事業を活用)。田町東部繁栄会会長の鈴木基生(もとお)さん(以下、基生さん)、建築家の彌田(やだ)徹さんらが中心となり、滞在型ワークショップ・セミナー(浜松や近郊で活動している職人を商店街に呼んで行うワークショップ)、ショップ・カードづくり(商店街の専門店の面白さを紹介するカードづくり)、ネイバーズデイ(新規店舗と既存店舗の交流会)などユニークな取組みを進めてきた。

これによって商店街は「こだわりのある物販店の街」としての自身のイメージを深化させると同時に、新規出店する者が地域とつながりやすい環境を整えていった。
「面白い人が集まり、楽しい企画が生まれる街」「古い建物から斬新な空間が生まれる街」「こだわりをもつ物販店が集まる街」——こうしたイメージに、多くの若者が惹きつけられる。'14年頃から、ゆりの木通りへの新規出店希望者は増え続け、メンズウエア、書籍や雑誌、陶器、サーフボード、骨董品などの多種多様な方面で〝こだわりをもった〞若者たちが、小粒ながらも魅力に溢れたセレクトショップを次々にオープンしていった。

'13年に67だった店舗数は、'17年には90以上にまで増加。結果、週末になると県外からも多くの買い物客が訪れるようになり、そのにぎわいによって既存店も刺激を受けていった。
「これまでずっと週末に閉まっていた喫茶店が、最近は必ず開くようになったりと、新しく入って来る店だけでなく、今ある店も含めて街の様子が変わってきています。この場所で何かできないかと相談をしていたら、周囲の人たちが面白さをどんどん追及して形にしてくれました」と、基生さん。

人と人がつながり、多様な価値観を柔軟に受け入れて進化するゆりの木通り。今後の展開に目が離せない。

「なぜ、ゆりの木に?」 若手店主インタビュー

ここ5年以内にゆりの木通り商店街で開業、もしくは移転してきた若手店主12 名にアポなし突撃インタビュー!

2015.1 移転OPEN
EE・松尾龍一さん
通りや人の雰囲気に惹かれて移転。移転して2年目を迎えるメンズセレクトショップ。「商店街の落ち着いた雰囲気が好きです」

2014.4 OPEN
PARK/ING(パーキング) 二橋孝寿さん
商店街を明るく照らすカフェに。公園がコンセプトのカフェ。「商店街に人を呼び込むきっかけとなれるよう、昼も夜も営業中!」

2015.9 OPEN
SHH 富田嗣人さん
店主同士の距離感がちょうどいい。メンズ・レディス問わずセレクト。「基生さんや他店との交流から情報をもらえて助かります」

2014.7 OPEN 
ニューショップ浜松 
植野聡子さん
作家さんへオープンな空間を提供!10㎝四方から空間を借りられるシェアショップ。「出品者同士をつなげることもあるんです」

2013.8 OPEN
美楽酒房 白蔵 
白井大士さん
地元高校生も気軽に蕎麦を食べに来ます。「大人の隠れ家的な商店街の雰囲気に惹かれて」開業した居酒屋。表には蕎麦のカウンターも。

2014.9 移転OPEN
CUSTOM FEVER 
水谷昌平さん
ここへ来て、売るおもしろさ倍増!アメリカで買いつけた古着が並ぶ。「手作り品バザールにも積極的に参加しています」

2017.5 OPEN
Rohan 鈴木林太郎さん
好きな空間でこだわりの陶器を。このビルの雰囲気にハマって開業。陶芸家による陶器や磁器を扱う。「商店街の方々は心強い存在」

2017.5 OPEN
+ tic(プラスチック)鈴木知悠さん、鈴木陽一郎さん
地域で育った建築家が商店街で活躍。万年橋パークビルにアトリエを置く建築ユニット。「学生時代からいるこの街で空間を造ります」

2017.1 移転OPEN
Black Point 松尾英範さん
60年代のビンテージボードをリペア。サーフボードのリペアや販売などを行う。「商店街のスウェル(うねり)が心地いいんです」

2015.7 OPEN
Signal 稲垣 誠さん
浜松の中心街に“刺激”を!店主と波長が合ったアパレルやモノのほか、地元作家の小物や作品、焼き菓子なども限定販売。

2012.10 OPEN
BOOKS AND
PRINTS 
新村 亮さん
出会いと交流が生まれる本屋へ。写真集や書籍、雑誌を販売。「お店を訪れた人が出会い、新たな企画が生まれることも!」

2015.4 OPEN
Antico
ダニエレ ベビビノさん
出身地イタリア・ローマをはじめ、ヨーロッパ各地の逸品を扱う。「若者からお年寄りまで、いろんな方にお越しいただきたいですね」

【COLUMN1】駐車場の空き部分を活用した実験的スペース「CUBESCAPE(キューブスケープ)」

コミュニティスペース「黒板とキッチン」のある立体駐車場「万年橋パークビル」の7階に、2017年4月より始動した「CUBESCAPE」がある。駐車場のフロアの一角にアトリエなどを集めた実験的スペースだ。

クルマ1台分の約半分のスペース(2.3m×2.3m)を1ユニットとして、そのユニットを組み合わせる形で賃貸。1ユニットは、天井と壁2面、すのこテラスで統一されており、下に車輪が付いていることから車輛と捉えることができる。そのため、賃料は駐車場代と同基準となり安価だ。ユニットを組み合わせることで、出店者の業態にあったスペースを自由に確保することかできる。

CUBESCAPEにはこれから活動の幅を広げたいという若手のアーティストたちが入居し、活発に制作活動を行っている。「試行錯誤しながら、新たなものを生み出そうと挑戦できる場を提供できれば」そう話すのはこの立体駐車場の経営者・鈴木基生さん。現在、スペースを利用しているアトリエは3軒で、互いに交流し、刺激しあっているとのこと。

このようなユニークなスペースを持つゆりの木通りは、さまざまな情報や作品を世界へと発信する若者たちの活動拠点となる可能性を秘めている。

 

 

【COLUMN2】商店街・手作り品作家・来街者が“三方よし”の商店街イベント 「ゆりの木通り手作り品バザール」

ゆりの木通り手作り品バザール実行委員長
織田里香さん

ゆりの木通りの商店街の有志によって毎年開催されているイベント「ゆりの木通り手作り品バザール」。その第1回目が実施されたのは、2008年夏のことだった。当初、市内で大規模に行われている「浜松七夕ゆかたまつり」の一環として実施されていたが、2013年よりゆりの木通りのオリジナルイベントとして独立。2016年からは、年に1度だった開催を2度に増やし、継続的に運営している。

「第1回目の開催から、毎回周囲の声に耳を傾け、年々改良していきました。その結果、今では(2017年10月現在)出店数は2日間で延べ400以上、集客は2日間で14,500人を誇る一大行事となっています」とバザールの運営委員長である織田里香さん(明治5年創業の老舗「カスミヤ」を経営)は語る。

「手作り品バザール」は、商店街と出店者と来街者をつなぐ重要な役割を担っている。

※バザールの詳細はこちらへ⇒「皆がつながる!第12回手作り品バザール開催」(商店街ニュース2017.10.03配信記事)


 
 

★この記事は、商店街活性化の情報誌「EGAO」の2017 Autumn(秋号)に掲載されています。
「EGAO」をご覧になりたい方はこちらへ。
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