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全国の魅力的な商店街をつくるための取り組み事例をご紹介します! 商店街活性化事例レポート

災害後、 私たちは 強くなった。 地域振興 各種連携 安心・安全 震災復興

 港町・神戸のなかでも、ハイカラを象徴する神戸元町商店街。時代の変遷とともに斜陽の気配が増していたその時、大震災に見舞われる。そこで商店街が自らに問うたのは、「地域のために何をすべきか」。この視点こそが震災時の対応、さらに震災後の街づくりの指針となり、やがて唯一無二の魅力を復活させる。震災を通して見る、商店街のあるべき姿とは──。

商店街名 神戸元町商店街連合会 兵庫県神戸市

左:震災直後の様子。東灘区・灘区・長田区などでは火災や全壊が多く見られた 右:5つの商店街振興組合をひとつにまとめる元町商店街連合会。左から同連合会事務局長・中多英二さん、会長・蓮池國男さん、相談役・奈良山喬一さん、青年部長・片山喜市郎さん、広報部長・松井隆昌さんと橋本友宏さん。街は新旧の店舗が混在し、独自の景観を誇る

震災を契機に前進した 地域のための商店街づくり

DATA
JR元町駅付近から神戸駅近くまで、東西約1.2kmにわたるアーケード商店街。1番街から3丁目、4丁目、5丁目、6丁目まで5つの商店街で形成

 神戸市に壊滅的な被害を与えた阪神・淡路大震災。だが、地盤が固いこともあり、比較的被害の少なかった元町商店街では、電力復旧後、商店街の照明を3カ月にわたって灯し続けた。
「被災後はこのアーケードを通って神戸駅から三宮まで向かう人が多かった。足元を明るく照らすことで、精神面でも安全面でも力になれたと思います」と当時を振り返るのは同商店街連合会相談役の奈良山喬一さん。 続いて取り組んだのは、商店街本来の使命である〝物資の提供〞だ。自らも被災者である店主たちだが、「いまは一刻も早く生活に必要な物資を届けよう」と、商店街の約7割の店舗がシャッターを開けた。
「緊急時に地域や市民のために何ができるのか」を考え、団結してとったこれらの行動は、地元の人々に高く評価されると同時に、店主同士の結束が高まる契機になった。そして、商店街でひとつの目標が共有されることになる。すなわち、「将来へ引き継げるような、地域のための商店街づくり」だ。

 同連合会がまず取り組んだ重要なテーマは「安心安全なまちづくり」だ。ここで大きな役割を果たしたのが、防災懇談会。これは、「来街者の安全を守るのは商店街の義務」という奈良山さんの思いから、’03年に発足。商店街だけでなく、震災を機に関係を深めた管轄消防署や警察署も必要に応じてメンバーとして参加し、震災後から増加したマンション居住者を含めた全地域住民の防災意識を高めるのが目的だ。ここで出た議論をもとに、「店主130名の市民救命士の資格取得」、同連合会を組織する5商店街にAEDを設置した「まちかど救急ステーション」など、さまざまなアイデアが実現。実際に、急病で倒れた来街者を市民救命士が蘇生することもあったという。また、’15年には災害直後の初動対応をまとめた「地域おたすけガイド」を作成。翌年にはその検証実験として、津波被害を想定した避難訓練を実施した。ここで光ったのは、商店街ならではのアイデアだ。たとえば、各店舗に常備してある消火器と台車は店舗前に置いて避難した。
「こうすれば、余裕のある人が消火や人の運搬に当たれるでしょう。商店街の資機材を活用できました」と同連合会事務局長の中多英二さんは成果を語る。

 被災した世代を中心に「安心安全」を推し進める一方で、青年部長の片山喜市郎さんら若い世代を中心とした新たな魅力の創造も進む。開業意欲のある若者への空き店舗貸出では、街に新しい彩りが。地場産業と連携したイベントでは、新住民との交流が促進。そして元町商店街のハイカラな景観の維持は来る者の目を楽しませる。結果、空き店舗は減り来街者は増加した。
 そうしてにぎわう、現在の元町商店街。それは、震災をきっかけに生まれた「地域のために商店街は何ができるか」という問いに、真摯に向き合い続けた結果なのだ。


将来に引き継ぐ「地域のための商店街」

安心・安全

震災で浮き彫りとなった安心・安全の課題。ハード面・ソフト面で改善を進めていった。




元町商店街が中心となって制作した「津波防災安全マップ」(下)と「地域おたすけガイド」。前者は避難経路や所要時間が記されたもの。後者は、神戸市危機管理室、消防署と手がけた、地域住民によるチェックリスト方式。各災害時の優先順位、救出や消火活動などの諸状況での対応などが記されている。上述した消火器や台車以外にも、ジャッキやのこぎりなど自前の防災資機材を活用した発想が光る


          
 
 



左)「地域おたすけガイド」の実証実験には商店街、消防団、警察、行政などから約50 人が参加。実際に高齢者など要援護者を台車に乗せて搬送するなどした。今後もこうした実証を経て精度を上げていくという。右) 毎年行っている「こうべ中央救急フェア」では地元小学校も参加した啓発パレードやAED 体験などが行われている。こうした大規模な訓練は、「行政との協力関係が不可欠」(奈良山さん)


       




 

商店街の各エリアに配置された「まちかど救急ステーション」を配置。心臓の状態を把握して電気ショックを与えるAED と、その近隣には市民救命士の資格をもった店主が店舗を構える。写真は、導入当時その普及に尽力した片山泰造さん。自身も市民救命士のひとりだ


                 




 
全長約1.2 km、およそ300 店舗の商店が軒を連ねる巨大な商店街では、防犯カメラが日夜市民の安全を見守る。また、全天候型のアーケードは風雨を凌ぎ、阪神・淡路大震災時には街の明かりとして24 時間足元を照らし続けた。津波避難の経路を示す看板もいざという時の助けになる


                 


 

活性化

若手たちの創意工夫。それらが街の価値向上につながっている。




元町独自のハイカラな街並みを保持するために、ファサードのデザインや色使いに一定のルールを設けた「景観形成市民協定」を’15 年に締結。有名チェーン店でさえ例外ではなく、派手な色は控えられる。こうした独自の景観が、商店街の魅力向上に寄与


           

 





神戸市の「若年者等商店街就職支援事業」を活用し、空き店舗を若年者にチャレンジショップとして貸し出している。家賃は神戸市が負担するため未経験でも挑戦しやすく、ここから新しいオーナーとなった人も。写真右はそのひとりである田村静香さん


            







元町商店街6 丁目青年部が主体となり、地場産業の神戸ワインをPR する「モトロクワインアベニュー」、灘五郷酒造組合とタイアップした「モトロク灘の酒ストリート」などを開催。イベントを通して、地場産業や行政、地域住民との交流が深まっている


            

 

 

★この記事は、商店街活性化の情報誌「EGAO」の2016 Autumn(秋号)に掲載されています。
「EGAO」をご覧になりたい方はこちらへ。
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