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全国の魅力的な商店街をつくるための取り組み事例をご紹介します! 商店街活性化事例レポート

約2500店、8つの商店街を繋げて、復興への道を邁進! 震災復興

 熊本城から坪井川を渡ったL字型に続くアーケード街をメインに広がる熊本市中心部の商店街。1日3万人の来街者を誇る熊本県内随一の繁華街が、震災にみまわれ半年が経った。その復興活動の中心となっている熊本市中心商店街等連合協議会(中商協)の取組みと、所属する商店街それぞれの想い、連携のかたち、そしてめざましい復興の軌跡を辿る。

商店街名 熊本市中心商店街等連合協議会 / 熊本県熊本市

中商協のメンバー。右から、熊本市駕町通り商店街振興組合 理事長・谷口正氣さん、上通商栄会 会長・河島一夫さん、熊本市中央繁栄会連合会 会長・荒木誠也さん、免税制度活用委員会 委員長・武本純一さん、中商協 会長・下通繁栄会 会長・松永和典さん、熊本市新市街商店街振興組合 理事長・安田二郎さん、安政町商興会 会長・片山和隆さん、銀座通繁栄会 会長・中島光司さん、中商協 事業部長・冨永裕二さん

まずはお店を開けて 商店街から元気を

DATA
熊本城や諸官公庁、バスターミナルに隣接した熊本市中心部の広域商店街。全長1.1kmのアーケード商店街を中心に8商店街が連携する
      

「売り場は用意するけん、棚から落ちたものでも割引して並べたらええって。とにかく商店街から元気を発信せんと——」
 震災から2週間後の5月1日、熊本市中心部のアーケード商店街で始まった「震災復興バザール」を振り返って、中商協こと熊本市中心商店街等連合協議会会長・松永和典さんは熱く語る。
 中商協は、上通商栄会、下通繁栄会、熊本市新市街商店街振興組合の3つの大型アーケード商店街と熊本市中央繁栄会連合会、熊本市駕町通り商店街振興組合、安政町商興会、銀座通繁栄会、シャワー通り商店会から成る連合組織であり、九州でも有数の来街者を誇る商店街だ。
 震災直後、多くの店舗が休業を余儀なくされ、アーケードから人通りがなくなった。そんな時、商工会議所を通じ、東日本大震災の被災地・仙台から「一日も早くお店を開け、商店街から地域に元気を発信しよう」といった助言を受け、松永さんはいち早く復興に向け立ち上がる。自身が会長を務める下通繁栄会(下通)が先陣を切り、「震災復興バザール」を開催することになった。



各商店街が個性を生かしながら連携! 一丸となって大きな力を生み出す

多くの協力を得て、 アーケードを売り場に

 下通はファッションや雑貨、グルメの専門店が建ち並び、中商協の中でも最も人通りが多い商店街。老舗百貨店として熊本の人々に親しまれてきた鶴屋百貨店も下通の一員だ。しかし震災直後全館が閉鎖された。
「商店街も大型店も商売人がひと月も休んだらダメになる」松永さんの呼びかけに応えて多くの人がシャッターを開けた。まずは地域の生活に必要なものをどんどん売ろうと、衣料品、食品、茶碗や皿などの食器類の販売からバザールが始まった。
「本来はダメなのですが、警察などの許可もとって、アーケードの真ん中に商品を並べました。郊外SCに支店のある子ども服のお店は、スプリンクラーで濡れた商品を洗って値引きして売りました。近隣のSCの多くが休業していたこともあり、GW以降も例年以上の来街者がありました」と松永さんは話す。

                                             
 

復興応援セール「くまもとがんばるモン」では、来街者が多くの応援メッセージを記した。


演劇にプロレス、野菜販売。 独自の復興イベントを開催

 下通から北へ続く上通商栄会(上通)もその動きに呼応し、5月25日より連日バザーを開催。上通は書店や楽器店、文具店など、老舗専門店が点在し、現代美術館や画廊といったアートスポットもあるなど、〝歴史と文化の街〞として知られている。
 アーケード内に舞台を設置し、地元劇団の寸劇やダンスなどを上演する『上通演劇まつり』を毎年開催、’16年度は『上通チャリティ演劇まつり』を企画。多くの来街者でにぎわった。
「バザールやこれらの活動を通じて、仲間意識も高まり新たな加盟店も増えました」と話してくれたのは、上通の専務理事・田原誠也さん。
 商店街独自の復興支援イベントは熊本市新市街商店街振興組合(新市街)でも顕著だ。幅の広い18mのアーケードをもつ新市街は、古くより映画館やアミューズメント施設、電器店などが軒を連ねている。
「娯楽性の高いイベントは、この広い空間だからこそできるんです」と話すのは、新市街理事長・安田二郎さん。7月の『熊本復興支援チャリティープロレス』では、アーケード内にリングを設置し、全国的に著名な団体も熱戦を繰り広げ、昔なつかしい昭和の遊びを体験できる『ミニ遊園地』ではファミリーが歓声をあげた。
 また、被害が大きかった上益城や阿蘇地域から農業者や個店を集めた『復興支援市』も催し、新鮮野菜を毎日販売している。
「復興を支援しながら、私たち新市街のにぎわい創出にもつなげたい」と安田さん。
 その多彩な取組みは「復興支援はもちろん、盛り上げるために、やれることは何でもやる」という商店街の精神の賜物だ。



上通の文房具店のブース。レジに募金箱も。

下通で募金活動をする地元高校生ボランティア。


建物の安全性が確認されるまで休業しているところも。この店舗は10月に再開予定だ

熊本県の象徴ともいえる熊本城も被災し、大きな被害を受けた。

新市街に掲げられた宮沢賢治の「雨ニモマケズ」の横断幕。群馬県桐生市の商店街から贈られた。


未来を見据えながら邁進、 さらに魅力溢れる商店街へ

8商店街のバザールが 大きな祭りの開催へ

ゆかた祭ではさまざまなイベントが開催。上通では噺家による寄席や子どもたちによる少女舞踊などが上演された



『震災復興バザール』に続き、駕町通り商店街に所属している鶴屋百貨店の再開に合わせ、中商協では6月1日より1カ月間、復興応援セール『くまもと がんばるモン』を開催。300店以上が参加したこのバザールは、多くの来街者を呼んだ。
 震災前より中商協は毎年『城下町くまもとゆかた祭』という大きなイベントを実施している。浴衣で来店すると各店舗で特典やサービスを受けられ、各々の商店街は抽選会や各種イベント、ステージなどの催しを実施、全体として中商協が運営やPRを行うという三層構造でにぎわいを作り出してきた。
「ゆかた祭は〝来ないと損〞と思わせたい」という松永さん。’12年からは、熊本市主催の『火の国まつり』とタッグを組み、『ばってん火の国 夏祭』のひとつとして開催してきた。’16年の夏には開催39回目を数え、熊本市の中心市街地が華やかになる大きな祭りだ。
「同時開催することで祭りにボリューム感が生まれ、より広く県内外にアピールできるようになりました。中商協以外のイベントもたくさん開催されるので、お客様も毎年楽しみにしてくれます」と松永さん。
 ところが震災後は自粛ムードが漂い、『ばってん火の国 夏祭』の開催も危ぶまれた。そこで中商協から熊本市長に直談判。
「おそらく下通だけで市長に会いに行っても動かなかっただろう。中商協全体の意見だったからこそ開催に至ったと実感しています」と松永さんは振り返る。



大人から子どもまで楽しんだ『三年坂そうめん流し』。

下通では買物額に合わせて抽選できる恒例の『お買い物ガラポン抽選会』を実施。

各商店街の個性が広げる 熊本復興への力

震災以前から行われていた商店街活動も、復興への大きな力となっている。たとえば上通では、『上通アートプロジェクト』を開催。熊本出身の現代美術家のアート作品展示に始まり、街の噂を吹き出しのPOPにして店内に展示する『うわさプロジェクト』など、毎年趣向を凝らしたイベントを催してきた。
 また、新市街では’14年に近隣の大型店が閉店し、青果を買いにくくなった地域住民のため、毎週土曜に『くまもと夕暮れ市』を開催してきた。
「それぞれの商店街が独自のイベントを開催することが、互いの刺激にもなります」と話すのは上通の副会長・橋本幸二さん。
 震災以前から、それぞれの商店街が個性を活かして活動し、中商協で密に連携をとってきた。そのことが復興への素地を作り、大きな力となっている。


想いを繋げて、 さらなるおもてなし

『ばってん火の国 夏祭』では、8つの商店街の想いがつながり、県内外から両日合わせて22万5千人(前年比130%)が来街。過去最高の盛り上がりを見せた。効果は集客だけではない。各商店街青年部からなる実行委員会が密接に協議し、催しごとの部会を設置。8商店街から集まった次世代を担う若手の交流、結束の場にもなっている。
 現在(’16年8月)は、毎年10月に開催される『熊本 暮らし人祭り みずあかり』と同時開催予定の『城下町くまもと銀杏祭』へ向け、準備を進めている。
 今後はさらに’19年に熊本で開催予定のラグビーワールドカップと女子ハンドボール世界選手権に向け、手続委託型免税店の増加などインバウンド対策を強化するほか、復旧が進む熊本城を外から見学して回るウォーキングツアーも企画しているという。熊本市付近には’17年以降、3年ごとに3つの商業施設が開業するため、これまで以上に連携を強化して、県内外に元気を発信していく。
 8つの商店街とそれぞれの個店が独自で魅力を磨く。そして、常に広い視座で未来を見据えながら強く連携することで、中商協は震災復興を通してさらなる進化を遂げようとしている。








★この記事は、商店街活性化の情報誌「EGAO」の2016 Autumn(秋号)に掲載されています。
「EGAO」をご覧になりたい方はこちらへ。
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