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全国の魅力的な商店街をつくるための取り組み事例をご紹介します! 商店街活性化事例レポート

被災した商店街 復旧・復興へ向けたその足取り 各種連携 震災復興

熊本県、大分県を襲った熊本地震。震源地から5㎞の距離に位置する健軍商店街では、核店舗が崩れ落ち、アーケードに大きな損傷を負った。コミュニティの担い手として地域に親しまれてきたこの商店街は、いったいどのようにこの困難を乗り越えるのだろうか。その復旧・復興の道のりを追う。

商店街名 健軍商店街振興組合/熊本県熊本市

熊本市東部に位置し、54店舗で構成されるアーケード商店街。「ピアクレス」の愛称がつけられている

‘16年4月に発生した熊本地震は家屋損壊などの被害を広い地域にもたらした。熊本県内では各地でライフラインが寸断。商店街も大きな影響を受けた。

健軍商店街は、市電の起終点を核とした熊本市東部エリアの中心に位置する、地域密着型の商店街だ。この地域は震源地から近く、深刻な被害に遭った。アーケードの支柱が大きく傾き、天井がいまにもくずれ落ちそうな商店街の様子は、熊本地震の象徴的なシーンとして全国にニュースで大きく伝えられた。この事態を乗り越えるため、商店街は本震後、いち早く復興委員会を立ち上げ、復旧に向けて歩きだした。

 

被災直後

震源地からわずか5㎞。 熊本市内でも健軍商店街の被害は深刻だった

シューズショップ ミワ代表。震災後、商店街の復興委員長として奔走する

壊れた建造物とおびたただしい瓦礫の数。アーケードはしばらく一部通行止めになった

4月14日の前震では、どの店舗でも商品が散乱したものの建物自体の被害はほとんどなく、翌15日は多くが休業して店内の片づけを行っていた。しかし16日未明に震度7の本震が起こる。

本震により、商店街内に建っていたスーパーマーケット「サンリブ健軍」(一部4階建て)が倒壊。それに押しつぶされる形で、アーケードの一部が大きく損壊した。商店街全体では大規模半壊以上の建物が7棟。商店街が所有する共同管理ビルも半壊し、商店街事務所はその機能を失った。
「サンリブとアーケードが大きく壊れ、商店街が完全に閉鎖されたという風評が急速に広がる可能性があった。一旦噂が立つと人が来なくなる。これではいけないと思い、店主たちに『シャッター一枚でもいいから上げて、片づけながらでも店を開けよう』と呼びかけました」と、同振興組合の理事・相談役の釼羽逸朗さんは当時を振り返る。

商店街の中央は瓦礫が積み重なり、どこから手をつけていいのか皆目見当もつかない状態だった。瓦礫を処理するためには、行政と交渉しなければならない。商店街の理事たちはすぐに復興委員会を立ち上げ、組織として復旧作業に臨む体制を整えた。

被災から1週間後

地域のお客様のために 早期復旧に向けて邁進

組合事務所が入るビルは半壊。中はものが散乱

震災直後、東部エリアでは大型店や食料販売店が閉店してしまい、高齢者たちが困っていた。「近隣のお年寄りの方たちは、その日のわずかな食料を買うだけのためにタクシー代を何千円も払って遠くまで行かなくてはならなかったようです。一日でも早くうちの商店街の店を開けなくてはと思い、店主の皆さんに声をかけ続けました」と釼羽さんは語る。
自宅が被災し、避難所や車中生活を送る店主も多かったが、それでも建物損壊やアーケードの一部通行止めの影響で営業ができない店舗を除き、25軒ほどが震災から1週間以内で営業を再開する。

商店街の安全を確保するために、全壊したスーパーマーケットの解体工事、および瓦礫撤去などの作業にも一刻も早く取りかかる必要があった。この時、市の臨機応変な対応に救われ、解体撤去作業への手続きがスムーズに進む。こうして復旧への大きな一歩を踏み出すことができた。

 

2ヶ月後

国や県の補助金支援策の活用方法を 決めていく作業が始まる

5月24日にアーケードは全開通した

同商店街内にある井川電気商会を営む。SNSを通じて他商店街と震災の情報を積極的にやりとりを行った

国や県の支援策も6月中旬には出揃った。被害額はこの時点で、アーケードなどの施設で2億4千万円、組合の事務所ビルが6千5百万円と見積もられていた。補助金申請の時期が具体的に決まったことで、復旧の道筋もはっきり見えてきた。7月、復興委員会のメンバーは補助金の申請手続きに懸命に取り組んだ。

「補助金など有益な情報は、いつもSNSを通じて他の商店街と共有していました。他にも、義援金や支援物資など大切な情報が熊本や全国の仲間たちから続々と送られてきて、それをどんどん拡散することができました」。今回の震災で、情報収集と発信の重要性、商店街同士の連携の大切さを学んだと、青年部長の井川正宏さんは語っている。

商店街は市内を走る路面電車の終点駅のそばにある。徐々にではあるが、住民の交流の場としてにぎわいが戻ってきた

‘16年9月~これから

アーケードの工事がスタート。 復旧計画を着々と進めるなか、イベントも開催

申請した補助金が9月2日に採択され、14日からアーケードの工事が開始となった。完成は12月初旬予定だ。組合の事務所ビルも来年末には新しいビルとして完成する見込み。核店舗のスーパーマーケット「サンリブ健軍」も再建が決まった。商店街の利用者は震災前に比べ現在のところ4割程度にとどまっているが、サンリブが営業を再開すれば、活気はもとに戻るだろう。

日常を取り戻しつつある健軍商店街では、行き交う人たちの顔もどこかなごやかだ。通りを歩くと、近隣に住むという年配女性たちが「何ば買ったと?」「地震の時は本当に大変でね」と、気さくに声をかけてくる。
釼羽さんは健軍商店街を「普段着で買い物をして、誰とでも世間話をする。そういうコミュニティが息づく商店街だ」と評する。

健軍商店街はもともと地域を大切にしてきた商店街。その象徴でもある、商店街の健康・福祉施設「まちなか図書館よって館ね」は、地元タクシー会社から運営面での協力を得て7月19日から再開し、現在は再びお年寄りの憩いの場となっている。
健軍商店街は、こうして一歩一歩着実に復旧・復興への道を進んでいる。この商店街の歩みは、今後災害に備える全国の商店街の道しるべとなるであろう。

 

フルーツショップモリタ代表。理事長として商店街をまとめている。復興バザーの開催でも尽力

9月10日、アーケード内で4回目の「復興支援バザー」を開催。保存食や衣類など市内にとどまっている支援物資を低価格で販売する。「日常生活がある程度戻っているため、無料配布ではなくバザーでの販売にしました。収益は市への義援金や周辺地域の復興事業に充てています」と理事長の森田憲一さん


★この記事は、商店街活性化の情報誌「EGAO」の2016 Autumn(秋号)に掲載されています。
「EGAO」をご覧になりたい方はこちらへ。
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